研究課題/領域番号 |
18K15661
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
磯田 健志 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (80815225)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エンハンサー活性制御 / 非コードRNA / 免疫不全症 / 急性リンパ性白血病 / 非ホジキンリンパ腫 / 運命決定 / エピジェネティクス / T細胞分化 |
研究実績の概要 |
感染制御を担うT細胞の系列決定には転写因子BCL11bの発現が必須である。BCL11bのスーパーエンハンサーから転写される非コードRNAであるThymoDとエンハンサー活性化機構の解明に向けた研究を継続した。ThymoDの転写領域におけるRループ形成、脱メチル化機構の解明のため、リンパ球前駆細胞からT細胞へ分化誘導実験を行った。T細胞の系列決定前と系列決定後でのR-loop形成、メチル化の評価を行うため、同分化段階の細胞が十分得られることを確認した。T細胞の分化誘導は、繰り返しの実験、変異導入後の実験、薬剤投与による検討を行うため培養血液前駆細胞(cCLP)とiLS細胞を用いて行った。今後、前駆細胞への変異導入を行い、R-loop形成への影響、メチル化状態の定量評価を予定している。 非コードRNAであるThymoDの転写障害を生じるとマウスにおいてT細胞系腫瘍を発症する。腫瘍細胞のRNA解析でThymoDの転写障害が改善している腫瘍がおおよそ半数に確認された。エンハンサーリモデリングに関与する因子を抽出するため全エクソンシークエンスを実施した。全エクソンシークエンスで、13検体中6検体で1.2MBに及ぶ非コードRNAのクラスター領域の欠損を確認した。また、13検体中4検体で染色体11番上にある転写因子Xの変異ないしは欠失を認めた。そのほか、プロモーター活性化の抑制に関与するNurd複合体、H3K4のメチル基分解酵素として働くにKdm1a複合体の構成たんぱく質の変異を同定している。今後T細胞の分化誘導系を用いてこれら遺伝子異常によるエンハンサー活性制御の影響について検討を行う。 非コード領域の遺伝子変異による免疫不全症発症に関する検討も継続している。変異例でのクロマチン凝集のメカニズム解明に向けて同部位に集積する因子の同定検索を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T細胞系列決定前後の核内局在変化を捉えるための分化誘導系の確立を行った。腫瘍細胞に対してのRNAシークエンス、エクソームは終了しておりさらに解析を進めていく。エンハンサー活性制御に関与する可能性のあるいくつかの候補を同定している。ヒトの解析においてもエクソームシークエンスで異常が見つからなかったケースで非コード領域の変異を同定しメカニズム解明に向けた検討を行っており、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞から検出された候補因子及び機能が判明していない転写因子群の増減により標的遺伝子の核内局在変化をT細胞分化誘導系を用いて、高解像度顕微鏡を用いて実施する予定である。またヒトThymoDの領域について遺伝子発現とエンハンサー・プロモーター相互作用の影響についてヒト細胞株及びヒトT細胞、白血病細胞を用いて非コードRNAの役割について探索を継続する。
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