研究課題/領域番号 |
18K15669
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村田 絵美 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特任助教(常勤) (30815824)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乳幼児 / 睡眠習慣 / 睡眠障害 / 発達 / 質問票 |
研究実績の概要 |
小児において、睡眠は脳の発達に重要な生理機構である。縦断的調査によると、3歳までに短時間睡眠だった小児では、後年の認知行動面の問題のリスクが高まるとされている(Touchette E, et al., 2007)。しかし、乳児期のどのような睡眠の問題が後年の発達に影響を及ぼすかについては明らかとなっていない。海外では乳幼児期の睡眠習慣を評価する養育者自記式の質問紙としてBrief infant sleep questionnaire(BISQ)(Sadeh A, 2004)があるが、BISQには睡眠習慣や睡眠パターンに影響する睡眠環境や、入眠の困難さや睡眠の質に影響するレストレスレッグズ症候群やアトピー性皮膚炎等の疾患の有無等を評価する項目がない。そのため、日本人乳幼児の睡眠を総合的にスクリーニングするツールの開発が必要である。本研究では、日本人の乳児期の睡眠の問題をスクリーニングする質問票を開発し、その標準化を行う。 現在、日本人乳幼児の睡眠の問題を総合的にスクリーニングするツールの開発のために、大阪大学医学部附属病院小児科を受診され、睡眠障害と診断された7歳未満の児のカルテから睡眠の問題をピックアップした。加えて、乳幼児期の睡眠習慣を評価する養育者自記式の質問紙であるBISQを基に、日本の添い寝文化等の睡眠習慣、住環境を反映したインタビューガイドに沿って神経発達症児と定型発達症児の養育者を対象に、3歳までに睡眠で養育困難を引き起こしていたケース等、その時期の問題の内容や月齢による変化等を詳しく聞き取り調査をし、睡眠の問題を拾い上げた。その結果、養育者の負担の程度による違いや月齢による変化に加え、神経発達症児と定型発達児の睡眠の問題の違いや、養育者が感じた養育困難内容の違い等が見えてきた。両者の乳幼児期の睡眠の問題や養育者の困難さを踏まえた、質問紙の項目作成へと進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経発達症児の養育者を対象にインタビューを行った結果、神経発達症に起因する困難さがあると推察された。より適切な質問票の作成のためには、年齢に伴う睡眠の状態の変化に加え、発達特性に起因する睡眠の問題を明らかにする必要があると考え、定型発達症児の養育者へのインタビューも行っている。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、対象年齢の小児、とりわけ定型発達児の受診者数が当初の想定よりも少ないため、データ収集に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
睡眠障害のある神経発達症児、定型発達児に関するカルテ情報、およびインタビューデータを基に、年齢に伴う睡眠の状態の変化に加え、発達特性に起因する睡眠の問題を検討する。睡眠の問題のリスト「乳児期の睡眠の問題リスト」を作成し、そのリストを基に「乳児版睡眠質問票」を作成する。 続いて、「乳児版睡眠質問票」の標準化を行う。 臨床群として、大阪大学医学部附属病院小児科で睡眠障害と診断された3歳未満の児200名の養育者に「乳児版睡眠質問票」の記入を依頼する。加えて、発達に関する調査と行動に関する調査を行う。 コミュニティー群として、1歳6か月児乳幼児健康診査受診児、もしくは保育所、こども園に通う3歳未満の児とその養育者に「乳児版睡眠質問票」の記入を依頼する。加えて、発達に関する調査と行動に関する調査を行う。なお、新型コロナウイルス感染症の影響による自治体の動向に十分留意しながら行う。 すべての質問票は無記名で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表を行うべく、定型発達児のデータも収集していたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、対象年齢の小児の受診者数が当初の想定よりも少なく、かつ、感染拡大の影響で、調査を中断せざるを得ない時期もあった。調査再開後も、新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、慎重に進めているため、調査に時間を要しているため。 引き続き、感染対策を取りながらデータ収集に努め、質問票の開発・標準化を行う。
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