研究課題
まず、高濃度酸素性未熟脳白質障害マウスモデルを検証するため。C57BL/6マウスを、P3-P5の48時間、酸素濃度80%の高濃度酸素環境下で飼育し、その後大気下でP12まで飼育したのち、脳を採取した。Olig2とO4の免疫組織染色を用いて、高濃度酸素に暴露された群はコントロール群に比し、脳梁および帯状皮質白質において、有意なオリゴデンドロサイトの成熟遅延が生ずることを確認した。次に、妊娠に伴い母体内で激的に変動する各種妊娠ホルモン(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、プロゲステロンなど)の間葉系幹細胞の増殖に対する影響の調査を試みた。まず、健常新生児の臍帯組織から間葉系幹細胞をin vitroで分離培養し、更に継代培養して増殖させたのち、各種妊娠ホルモン(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン, プロゲステロン)を異なる濃度で添加した条件下でpassage 4のヒト臍帯組織由来間葉系幹細胞を培養し、細胞増殖スピードの比較を試みた。同実験で細胞の良好な増殖が得られず、一旦中止し、調整のうえ、再開を試みている。その結果を得て、最も細胞の増殖に至適なヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、またはプロゲステロン濃度の条件を同定し、上記高濃度酸素性未熟脳障害マウスモデルを用いて、同妊娠ホルモンの影響下で発揮される臍帯組織由来間葉系幹細胞の脳白質保護効果をオリゴデンドロサイト(Olig2、O4)、ミクログリア(Iba-1)、oxidative stress(4HNE)の免疫組織染色を用いて検討する。
4: 遅れている
代表研究者の異動先の施設で、実験を試みたが、良好な研究の進展が得られず、中断し、原因調査、研究物品の整備調整等に時間を必要としたため。一方、同時進行で実施していた他の研究が非常に順調に進展し、研究のフォーカスがそちらにシフトして進められたことも要因としてある。今年度は再び調整したうえで、本題の研究を進めていく。
細胞培養の研究から得た結果をもとに、最も間葉系幹細胞の増殖に至適な妊娠ホルモン(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、またはプロゲステロン)の濃度を同定後、上記高濃度酸素性未熟脳障害マウスモデルを用いて、①高濃度酸素群、②高濃度酸素+間葉系幹細胞投与群、③高濃度酸素+妊娠ホルモン(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、またはプロゲステロン)投与群、④大気下飼育+間葉系幹細胞投与群、⑥コントロール群、の5群を比較検討し、妊娠ホルモンの影響下で臍帯組織由来間葉系幹細胞の脳白質保護効果が増強されるかを検討する。治療効果の評価として、免疫組織染色、神経行動評価を実施する。
研究が進展が遅れたため。本年度は新たに調整したうえで、当初の計画を進めて行く。
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Pediatrics & Neonatology
巻: 64 ページ: 625~626
10.1016/j.pedneo.2023.04.002
小児科臨床
巻: 76 ページ: 111-116