これまでの慢性肺疾患(CLD)モデルラットにおいて、肺組織からmRNAを抽出し、逆転写酵素でcDNAを作製した後に、リアルタイムPCRで相対定量を行い、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)3がCLD群で低下がみられたことを報告した。また、血管新生に関わるアンギオポイエチン2/1の上昇、間葉系幹細胞(MSC)のホーミングに関わるCXCR4の低下、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の低下やハウスキーピング遺伝子として知られるグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)の上昇を認めた。リアルタイムPCRでは、既報のTNFαやIL-1といった炎症性サイトカインの上昇は見られなかった。 私のこれまでの実験で、高純度間葉系幹細胞(REC)や骨髄由来MSC(BMSC)や臍帯由来MSC(UMSC)の移植では、CLDを有意差をもって改善させることはできなかった。 肺におけるmRNAの発現の低下している遺伝子(SOD3、アンギオポイエチン1、CXCR4)はいずれもMSCで発現している遺伝子であり、これらの遺伝子を過剰発現させたMSCを移植することで、CLDが改善するのではないかと考え、SOD3遺伝子を過剰発現したMSCを作成した。SOD3過剰発現MSCをCLDモデルラットに移植し、一定の治療効果が見いだされたと思われたが、実験を繰り返したところ、有意差を認めるほどの改善は認められなかった。すなわち、肺高血圧のひとつの指標である、乾燥右室/左室中隔重量比や肺野の評価に有意差は認められなかった。
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