研究課題/領域番号 |
18K15674
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
早川 誠一 広島大学, 病院(医), 助教 (60815314)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 新生児 / 制御性T細胞 / 腸内細菌 / TCRレパトア |
研究実績の概要 |
2018年度の37例に追加し、2019年度は経腟分娩群8例、帝王切開群11例、合計19例を対象に解析を行い以下の結果を得た。 ①Tregの数的評価:フローサイトメトリーを用いて、臍帯血、新生児末梢血のTreg (CD4+CD25+Foxp3+CD127low/- cells)を昨年度の症例と合わせた経腟分娩27例、帝王切開29例で検討した。CD4+細胞におけるCD4+CD25+Foxp3+細胞の割合は、経腟分娩群で3.21%(臍帯血)、8.70%(新生児早期)5.34%(新生児後期)であった。帝王切開群ではそれぞれ、3.12%、7.31%、4.66%であった。CD4+CD25+CD127lowの割合は、経腟分娩群で8.18%、14.12%、9.46%、帝王切開群で7.61%、13.39%、8.97%であった。過去の報告と同様に新生児早期にTregの有意を認めた。経腟分娩群で新生児早期のTregが高い傾向であったが有意差は認めなかった。 ②Tregの機能評価:Treg isolation kitを用いてTregとresponder T cellを分離し、Treg Suppresion Inspector をにてTreg抑制機能の評価を行ったが昨年度と同様に信頼性のある結果が得られず評価方法を再検討している。 ③TCRレパトア解析:2019年度に対象となった19例に対してIOTest Beta Mark TCR Vβレ パトア解析キットによるフローサイトメトリーを用いたTCR Vβレパトア解析を施行した。帝王切開群、経腟分娩群ともに、臍帯血、新生児早期、新生児後期末梢血中のTregにおけるTCR Vβレパトアの使用頻度に変化はなかった。新生児期早期に有意な増加を認めたTregにおいてTCR Vβレパトアの偏りは認めなかった。 ④腸内細菌叢の解析:便検体よりDNAの抽出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画していた制御性T細胞のTCRレパトア解析が、取得可能な細胞数の問題で次世代シーク エンス法を用いた解析が困難であった事から、フローサイトメトリー法を用いたTCRレパトアの解析に変更して解析を進めている。役職の変更により業務時間が増えた事より、症例数は十分ではなく、さらに症例を追加しての検討が必要と考えている。腸内細菌叢の変化まで解析がすすんでおらず期間を延長して解析を進める予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
2018、2019年度の研究では、我々が以前報告した新生児期早期のTregの増加と一致する結果であった。経腟分娩群においてTregの割合が高い傾向を認めるが、有意差には至っておらず、さらに症例数を増やしての再評価が必要であり、2020年度もTregの解析を継続して行う。生後早期のTregの上昇とTCRレパトアの変化とに関連性は見いだせておらず、現時点の結果からは、新生児期早期のTregの上昇は、非特異的な反応によるポリクローナルな増加が示唆される。帝王切開群、経腟分娩群での比較ではTCRレパトアに差は認めていない。TCRレパトア解析に関しても、さらに症例数を増やしての再検討を継続して行う。腸内細菌叢の解析は糞便からのDNA抽出までしか施行できておらず、16SrRNA解析による腸内細菌叢の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は当初の計画より症例数を20例増やす予定であった。実際は、役職の変更により業務時間が増えたことで実験に割り当てる時間が減少したため、当初計画された予定数から症例を増やしての解析が困難であった。さらに、腸内細菌叢の解析も終了できなかったことより予定されていた額を使用できなかった。 発生した次年度使用額の使用計画として、20症例の解析の追加および腸内細菌叢の解析を行う。さらに、制御性T細胞の機能解析は、細胞数の問題で安定した結果が得られておらず、機能解析に関しても限られた細胞数で解析可能な実験系の確立を目指して実験を継続する。
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