研究実績の概要 |
山口県内の重症心身障碍児・者におけるプロテインC(PC)欠乏症の有病率を明らかにするため, これまでに計67人のスクリーニングを行い, 遺伝性血栓症の疑いがありかつ同意の得られた7人に遺伝子検査を施行したがPROC遺伝子の変異は認められなかった.このためPC欠乏症に特化した血栓症発症リスクの縦断的検討は困難なため, 血栓症発症に関連する内的・外的因子を明らかにするため, 重症心身障碍児・者および新生児-小児期に血栓症(脳出血を含む)を発症した患児について追跡調査を行った.新生児期-小児期に明らかな血栓症の既往のない重症心身障碍児・者49例, 胎児期/新生児発症が10例(脳出血4例・脳梗塞6例), 乳児期-小児期発症が7例(脳梗塞4例, 脳出血1例, 深部静脈血栓症1例, 脊髄出血1例)を対象とした.初回検査から少なくとも1年以上経過後に血液検査もしくはエコー等の画像検査でフォローできたのは, 重症心身障害児・者44例, 胎児期/新生児発症は4例, 乳児期-小児期発症が5例であった.重症心身障碍児・者において3例で新規の壁在血栓を認めた.胎児期/新生児発症の4例, 乳児期-小児期発症の5例では新規の血栓症は認められなかった.また乳児期-小児期発症の1例(深部静脈血栓症の既往がある重症心身障害児)および重症心身障碍者の5例において経過中の血液検査で一過性のD-dimer上昇(主に発熱・感染時)を認め, うち1例が新規の壁在血栓を認めた.新規の血栓症発症のリスクについて多変量解析を行うも統計学的有意差は認められなかった.要因としてフォロー期間が短いこと, 2020年から続くCOVID-19流行に伴いとくに外来患者の受診・検査が定期的に行えずデータのばらつきが大きいこと, リハビリも含めた生活様式が一変しておりフォロー項目にない未検出の交絡因子の可能性も否定できないと考えられた.
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