本研究の目的は、脳の機能的結合と脳体積のデータを統合させて脳の定量的評価を行い、早産児一人一人について、精度の高い脳成熟パターンを明らかにすることである。本研究では、早産児について26週から縦断的に早産児の脳の機能的結合を近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)で計測を行い、かつNICU退院前に撮影したMRI画像を用いて脳体積解析を行う。それにより得られる脳成熟パターンに対して、ステロイドなど新生児の集中治療が与える影響を明らかにすれば、脳保護指向型の治療を開発することができる。さらに、退院後の発達障害の発症を予測する脳成熟パターンを明らかにすれば、リスクの高い早産児に対して早期発見・早期介入が可能になり、障害の予後を改善させることが期待できる。 平成30年度は、早産児43名について、MRIの3次元T1強調画像を用いて脳体積解析を行い、NIRSデータの予備的な解析も行った。脳体積解析は、これまでの一般的な方法に独自に修正を加え、自動的に白質の分画を補正する方法で脳各部位の体積を算出した。早産児の対象症例については、脳損傷の少ない治療法(脳保護指向型治療)の開発を目指すために、NICU入院中における臨床プロフィール、特に人工呼吸器管理、ステロイド使用等の治療を記録した。そして新生児期の脳成熟パターンが、その後の発達障害の発症とどのように関連するかを前方視的に解析し、発達障害の早期発見の指標となりうるかを検証していくために、NICU退院後の発達検査の結果を記録した。 また、早産児のデータと比較する目的の正期産児についても同様の検討を行った。
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