研究課題
本研究の目的は、脳の機能的結合と脳体積のデータを統合させて脳の定量的評価を行い、早産児一人一人について、精度の高い脳成熟パターンを明らかにすることである。本研究では、早産児について26週から縦断的に早産児の脳の機能的結合を近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)で計測を行い、かつNICU退院前に撮影したMRI画像を用いて脳体積解析を行う。それにより得られる脳成熟パターンに対して、ステロイドなど新生児の集中治療が与える影響を明らかにすれば、脳保護指向型の治療を開発することができる。さらに、退院後の発達障害の発症を予測する脳成熟パターンを明らかにすれば、リスクの高い早産児に対して早期発見・早期介入が可能になり、障害の予後を改善させることが期待できる。令和3-4年度は、早産児43名について、MRIの3次元T1強調画像を用いて脳体積解析を行った。NIRSの予備的な解析も行った。早産児の対象症例については、脳損傷の少ない治療法(脳保護指向型治療)の開発を目指すために、NICU入院中における臨床プロフィールについて予備的な解析を行った。また、NICU退院後の発達検査の結果のデータ収集を行った。これにより新生児期の脳成熟パターンが、その後の発達障害の発症とどのように関連するかを前方視的に解析し、発達障害の早期発見の指標となりうるか検証することを目的とした。早産児のデータと比較する目的の正期産児についても同様に検証した。実際にはNIRSの解析に時間を要し、脳成熟パターンの同定に苦慮した。そのため、同様に脳の機能的結合を評価する目的で正期産児のてんかん症候群の児について、脳の成熟過程を反映していると考えられる脳波パターンを見出し、脳波形状の定量的解析を行った。それにより年齢による脳波の形態的差異が明らかとなり、論文化した。発達期の脳の成熟過程を反映している可能性および、脳成熟パターンの病態解明に有用であると考えられた。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
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