研究実績の概要 |
本研究では、移植関連血栓性微小血管障害(TA-TMA)を来した患者の血液を用いて病因となる17遺伝子(CFH, CFHR1, CFHR3, CFHR4, CFHR5, CD55, CD59, CD46, CF1, CFB, CFP, C5, ADAMTS13, CFD, C3, C4BPA, THBD)のターゲットシーケンス解析を行い、日本人のTA-TMAにおける遺伝子変異の型や頻度を明らかにする。さらに、移植前患者検体を用いてターゲットシーケンス解析結果を蓄積することで造血幹細胞移植(HSCTにおけるTA-TMAの予測が可能であるか解析する。将来的にこれらの解析系を用いて移植前ターゲットシーケンスでスクリーニングを行い、高リスク群を抽出することを目的としている。
TA-TMAをきたした患者検体18例とコントロール検体16例を、かずさDNA研究所でエクソン、隣接するイントロン、非翻訳領域について特定領域を濃縮する均等化ターゲットキャプチャー技術を用いてTA-TMA病因とされる17遺伝子について、TA-TMA疾患パネルを作製した。また、次世代シーケンサーHiSeq2500を使用し、NextGENeソフトウエアを用いて解析した。すべての変異体からSNPを除外しコーディング変異、フレームシフト、スプライシングバリアントを抽出するところまで終了した。
TA-TMA18検体中12検体に病的変異その他、文献上変異についての報告があるものを認めた。また、18検体中4検体には、文献の報告はないが、低頻度MAF(major allele frequency)の変異があるものをTA-TMA3検体に認めた。しかし、コントロール群との有意差を現時点で認めないことから、パラメーターの変更などで有意差が生じる条件がないかの検討を現在行っている。
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今後の研究の推進方策 |
TA-TMAを来した患者の血液を用いて病因となる17遺伝子(CFH, CFHR1, CFHR3, CFHR4, CFHR5, CD55, CD59, CD46, CF1, CFB, CFP, C5, ADAMTS13, CFD, C3, C4BPA, THBD)のターゲットシーケンス解析を行い、解析したTA-TMAにおける遺伝子変異の型や頻度は判明した。今後、更に検体数を増加させる予定である。 そして、対象患者の年齢、性別、臨床診断、移植ソース、HLA一致度、前処置レジメン、感染合併の有無、GVHD予防薬の種類、GVHD有無と重症度について臨床情報を抽出し、TA-TMA発症との相関を認める因子を同定し、同定された17遺伝子それぞれの変異とTA-TMAの発症率を解析する方針である。まあ、遺伝子変異の個数とTA-TMAの発症率の相関の検討や、17遺伝子における変異と移植全体の生存率を検討する予定である。 最終的にはこれらの解析結果から、TA-TMAの発症に最も関与する遺伝子変異ならびにリスク因子を同定したいと考える。
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