移植関連血栓性微小血管障害(TA-TMA)は致死率の高い移植関連合併症で、造血幹細胞移植後の克服すべき合併症の一つである。TA-TMA発症には、TMAや補体活性に関連する変異を有する患者に大量化学療法、免疫抑制薬、感染などの環境要因が加わることが必要とされている。本研究ではTA-TMAを来した患者DNAを用いて、TMAを来す病因となりうる17遺伝子を含む40遺伝子解析を行い、日本人のTA-TMAにおける遺伝子変異型や頻度を明らかにすることを目的とした。将来的に移植前に遺伝的スクリーニングを行い、TA-TMA発症高リスク群への予防的介入やTA-TMA発症後の早期介入が可能となり生存率が向上することを期待している。 2017年より宮崎大学と包括連携協定を締結したかずさDNA研究所との共同研究によりエクソン、隣接するイントロン、非翻訳領域について特定領域を濃縮する均等化ターゲットキャプチャー技術を用いてTA-TMA病因とされる17遺伝子を含む40遺伝子について、TA-TMA疾患パネルを作製した。このパネルを用いて、移植前に採取した寛解期末梢血もしくは骨髄液のゲノムDNAを使用し検討を行った。最終的にTA-TMA検体20例とコントロール検体20例を収集した。予定症例数より少ないが、これ以上の症例集積は困難と判断し収集終了とした。全例かずさDNA研究所で次世代シーケンサーHiSeq2500を使用し、NextGENeソフトウエアを用いて解析した。すべての変異体からSNPを除外しコーディング変異、フレームシフト、スプライシングバリアントを抽出した。TA-TMA例に認める病的変異や文献報告はないが低頻度MAF変異などが、コントロール検体と比較して統計学的有意差が生じるかについて最終検討をしている。臨床情報収集し発症や予後予測に関連する因子の有無の検討まで行い、学会発表・論文発表予定である。
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