研究課題/領域番号 |
18K15683
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
外崎 円 京都府立医科大学, 医学部, 研究員 (70745637)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 先天異常学 / 細胞周期 / ASPM |
研究実績の概要 |
(1)Fucci発現脳特異的Aspm欠損マウス(Fucci-NesCre;Aspmflox/flox)の作製:当該マウスを作製するにあたり交配の組み合わせを検討し、Fucci-Aspmflox/floxホモ親とNesCre;Aspmflox/+ヘテロ親の組み合わせが、効率的にFucci-NesCre;Aspmflox/flox (Aspm cKO)を作製できることが分かった。 (2)脳スライスの作製方法の検討:まず、Aspm cKOでアポトーシスが多く発生したE12.5, E14.5における冠状断スライスの効率的な作成方法を検討した。E12.5は大脳壁構造が未発達であり、正確に観察面をとらえることが困難であったが、E14.5は大脳壁が発達しており実体顕微鏡下で取り扱いが可能であった。さらに、ビブラトームと比べ、顕微鏡下で自作の極小メスにより短冊状にスライスすることで、操作工程の簡略化できダメージも少なくFucciの発現が明瞭に確認できた。このことから、E14.5を対象とすることが妥当であると考えた。 (3)Fucci発現細胞のタイムラプス観察:つぎに、脳スライスをコラーゲンで包埋し、顕微鏡に設置したインキュベータ内で培養しながら、5分間隔で16時間連続観察した。既報どおり、Fucciが細胞周期のS/G2/Mを緑色、G1/G0期を赤色の蛍光タンパク質で細胞核を可視化するように、当該マウスにおいても、脳室帯に緑色、中間帯および皮質板に赤色の核を有する細胞を明瞭に認めた。しかし、Fucci蛍光は経時的な変化をするものの、細胞周期に連動するエレベータ運動については下降する緑色の細胞のみ観察され、G1期の上昇する赤色の細胞の挙動をとらえることができなかった。脳スライスでの検証が困難であると考え、現在分散培養系によるタイムラプス観察条件を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Fucci-NesCre;Aspmfloxマウスを用いた脳スライスによるタイムラプス観察において、当初計画していた動態観察が困難であることが分かった。現在、当該マウス由来の神経幹細胞を用いた方法に変更し、解析を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)タイムラプスによる細胞周期解析:まず、G1期の核が赤色の蛍光、S/G2/M期の核が緑色の蛍光を発するFucciを発現する遺伝子改変マウス由来の野生型神経幹細胞(NSC)を用いて、観察条件を確立する。この方法を用いて、Fucci-NesCre;Aspmflox/flox(Aspm KO)胎仔由来のNSCの挙動と比較する。さらに、観察終了時点でのNSCサブタイプを蛍光細胞染色などで解析し、増殖・分化および、対称・非対称分裂情報を取得し、単一細胞レベルでのWTとAspm KOの違いを調べる。 (2)遺伝子発現解析:胎齢14.5日目のAspm KOおよび野生型の胎仔脳の側脳室周囲増殖細胞層を回収し、Aspm依存的に変動するDNA損傷修復関連分子、アポトーシスに関連する遺伝子群を判別する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度の計画に変更が生じ、解析方法の追加に伴い前倒し請求を実施した。これは、解析用の当該マウスの作製、輸送費および細胞培養関連費への充当を予定していた。しかし、想定よりもマウス作製の効率が高くなり、作製回数が抑えられ輸送費に余剰が出た。次年度は、野生型と変異型間の遺伝子発現解析を行う。さらに培養細胞を用いたタイムラプス解析により、蛍光色および細胞形態から増殖・分化、対称・非対称分裂情報の取得および細胞死の有無を検証する。これらにより、神経幹細胞の細胞周期制御とアポトーシス発生におけるAspmの役割を推察する。
|