研究課題/領域番号 |
18K15685
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小島 華林 自治医科大学, 医学部, 講師 (00468331)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / AADC欠損症 / AAV / Gaucher病 / 小児神経 |
研究実績の概要 |
AADC欠損症はドパミン・セロトニン合成に必須の酵素AADCが先天的に欠損し、典型例は乳児期から運動発達が得られない常染色体劣性遺伝性疾患である。当科ではAADC欠損症に対してアデノ随伴ウィルス2型(AAV2)ベクターを定位脳手術により両側被殻へ注入する遺伝子治療を2015年から臨床研究として行っており、2018年度は遺伝子治療によりAADC欠損症患者の運動機能及び認知機能が著しく改善した治療効果について論文報告した(Kojima, et al, Brain 2019)。本研究は現行のAADC欠損症遺伝子治療及び診断をより低侵襲・高効率とする方法の開発、遺伝子治療効果による器質的・機能的な変化の解析、他の遺伝性小児神経疾患に対する遺伝子治療の開発が目的である。2018年度の研究は、① AADC欠損症に対する遺伝子治療臨床研究の実施継続と認知機能の改善を中心とした評価 として、治療後2年以上経過した患者のMRI-DTI画像を用い、ドパミン神経投射線維を治療前後で比較した解析で器質的改善について評価した。また、AADC欠損症の早期診断・早期治療を目指した②早期診断スクリーニングシステムの開発として、LC-MS/MSを用いた、乾燥ろ紙血での3-O MD測定系は樹立され、パイロット研究として保護者より同意を得た院内出生新生児のろ紙血を収集し、検査を開始している。③AADC欠損症の新たな治療法の開発、④他の神経疾患: Gaucher 病に対する遺伝子治療法開発研究についてもAAVを用いて共同研究者と新たな治療ベクターを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①AADC欠損症に対する遺伝子治療臨床研究の実施継続と認知機能の改善を中心とした評価 :治療後2年以上経過した患者が複数名おり、MRI-DTI画像を用い、ドパミン神経投射線維を治療前後で比較した解析で器質的改善について評価している。また、認知機能評価のために、アイトラッキングを用いた検査を治療前後で試行しており、データ解析中である。 ②早期診断スクリーニングシステムの開発:LC-MS/MSによる、ろ紙血での3-O MD測定系を用いて、院内出生新生児のろ紙血を収集し検査をするパイロットスタディは開始されており、今後は検体収集・輸送システムについて検討の上、協力施設を募り広く展開する。 ③AADC欠損症の新たな治療法の開発、④他の神経疾患: Gaucher 病に対する遺伝子治療法開発研究についてもAAVを用いて共同研究者と新たな治療ベクターを設計・作成中であり、マウスへの投与に向けて準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
①AADC欠損症遺伝子治療の評価 :解析すべき治療前後のMRI-DTI画像、認知機能評価のためのアイトラッキング検査データはすでに蓄積され、今後もデータが増加するため随時解析を行っていく。②早期診断スクリーニングシステムの開発 :現行のパイロット研究をもとに、協力施設募集及び検体収集システムを構築する。③AADC欠損症の新たな治療法の開発 :治療用AAV2ベクターは作成済みであるが、AAV9ベクターを作製し、マウスへ静注・髄注し、治療効果の解析・ベクター発現範囲の同定を行い、ベクター投与経路の低侵襲化を目指す。 ④ 他の神経疾患: Gaucher 病に対する遺伝子治療法開発研究: AAV9にGBA1遺伝子を挿入したベクターをGaucher病モデルマウスに投与し、グルコセレブロシド 測定、病理学的解析、行動解析等による治療効果を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いた実験は次年度以降に計画したため、マウス購入・飼育、組織学的解析試薬等の購入を次年度へ変更したため、次年度使用額が生じた。
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