研究課題
Additional sex combs like1(ASXL1)遺伝子変異は骨髄異形成症(MDS)などの血液疾患の要因である。ASXL1変異がJAK2V617F(MDS/PMFの原因遺伝子として知られている)に及ぼす機序を解明し、MDS患者に対する新規薬剤開発(分子標的治療薬など)につなげるべく本研究を提案した。昨年度はヒト急性骨髄性白血病 (AML)においてASXL1変異およびJAK2V617Fを有する患者の予後が極めて不良であることを確認した。さらにAsxl1+/-マウスと、JAK2V617Fトランスジェニッ ク (JAK2V617FTg)マウスの2重変異(Asxl1+/-, JAK2V617FTg)マウスを作製し、Asxl1+/-, JAK2V617FTgマウスは生後約8か月でAMLを発症し、より重篤な表現型を呈することを確認した。今年度は、さらに各月齢における表現型の変化を確認すべく、それぞれ生後2、4、6、8か月時点での血球数、骨髄細胞のコロニーアッセイ、骨髄及び脾臓における繊維化の有無を確認した。興味深いことにAsxl1+/-, JAK2V617FTgマウスは出生後早期に本態性血小板血症及び骨髄繊維症を認めた。好中球数、血小板数も有意な増加を認め、前駆細胞でありBUF-E、CFU-E、CFU-MKはいずれも増加していた。以上よりASXL1変異がJAK2V617Fと強調して骨髄繊維化を増強させると考えた。本事象についてLeukemia誌に報告した (Guo Y, Zhou Y, Yamamoto S, et al. ASXL1 alteration cooperates with JAK2V617F to accelerate myelofibrosis. Leukemia 2019)。
2: おおむね順調に進展している
当初の仮説通りエピジェネティック制御機構の破綻がより重篤な血液悪性疾患の発症に関連することを確認し得た。本事象は本研究課題において根幹となる部分であり、事象そのものについて科学雑誌に投稿、受理された。
今後は、病態解明及び新規薬剤検索を進める。昨年、H3K27me3の発現はAsxl1+/-, JAK2V617FTgマウスにおいて有意に低下していることを確認した。 以上より、AMLの発症に、H3K27me3低下によるがん原遺伝子の脱抑制が関与していることが示唆された。本年度の成果において出生直後から骨髄繊維症を認めたことはASXL1遺伝子の欠失のよるものと考えられ、そのメカニズムについて解明したい。さらに、in vitro、vivoのいずれにおいてもJak2阻害剤やエ ピジェネティック制御機構を標的とした新規薬剤を用いた効果判定を行う。
抗体の使用量が想定よりも若干少なかったため少額の次年度使用額が生じました。翌年度分と合わせて消耗品及び抗体、プライマー等を購入し、課題を遂行します。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件)
Leukemia
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