研究課題/領域番号 |
18K15688
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
平井 麻衣子 日本大学, 医学部, 助教 (70726067)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小児がん / 小児がん経験者 / 妊孕性 / 晩期合併症 / 抗ミュラー管ホルモン |
研究実績の概要 |
近年、小児がんの長期生存率は向上しており70%を超える5年生存率が得られるようになり、米国では15歳から45歳の全人口の900人に1人が小児がん経験者であると報告されている。長期生存が可能となった一方、小児がん経験者には治療後数年~十数年経過した後に、小児がん治療による晩期合併症が出現することが明らかになった。なかでも小児がん経験者の不妊症、不育症の問題は小児がん経験者の中で関心が高いにも関わらず、実際小児がん経験者自身の妊孕性がどの程度あるのかどうかは医療者でさえも把握できていないのが現状である。不妊症のリスクファクターとしてアルキル化剤の使用、全身放射線照射、腹部照射の既往が知られているが、それ以外の治療を受けた症例においても不妊症の小児がん経験者は存在し、小児がん経験者がどの程度妊孕性を維持できているのか未だ不明である。 本研究は女性小児がん経験者の妊孕性がどの程度であるか、また妊孕性が低下している場合は何が原因であるかを解明する研究である。具体的には女性小児がん経験者の卵巣の予備能のマーカーである抗ミュラー管ホルモン値の測定により妊孕性を評価し、妊孕性の低下と小児がんの治療歴(発症年齢、疾患、治療内容、治療経過年数など)との関連を明らかとする研究である。 今年度に小児がん長期フォローアップ外来を受診した女性小児がん経験者約50名に対し、本研究の説明を行い約30名の同意が得られて、21名に抗ミュラー管ホルモン(AMH)測定検査を含む種々の検査を行った。同意は得られたがまだ検査が出来なていない対象に対しては順次検査を行う予定である。 また、これに並行して、女性小児がん経験者の発症年齢、疾患、治療内容、治療終了後経過年数など対象となる女性小児がん経験者のデータベースの作成を 行った。これらのデータを合わせて、小児がん経験者に妊孕性の程度と妊孕性低下の危険因子の解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は小児がん長期フォローアップ外来を受診している女性患者さんを対象に説明を行い、同意が得られた後、別日に検査を行っている。説明、同意、検査まで段階的に進めるためタイムラグが生じるため検査実施までに時間がかかる。また、研究内容が妊孕性に関することでありデリケートな部分が多分に含まれているため、対象者の意向を十分に尊重して取り行っているため、同意、検査決定までに予定より時間がかかる傾向にある。また、本研究の対象者である小児がん長期フォローアップ外来受診者は、通院頻度が半年~1年に1回であるため、候補者に説明を行うまでに時間がかかる。そのため、前年度はやや遅れている状況であったが、2019年度進捗状況は改善してきている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の対象となりうる候補者でまだ研究の説明をしていない対象者に順次インフォームドコンセントを行う予定である。また、これに並行して、同意は頂いたがまだ検査実施待ちの対象者に速やかに検査を実施する。検査結果が出た対象者に関しては、現在作成している対象者のデータベース(小児がん発症年齢、疾患、治療内容、治療終了後経過年数)と合わせて女性小児がん経験者の妊孕性の程度とその危険因子について検討を行う。現時点で集まったデータで解析を行うと、若年者のAMHの評価が困難であることが明らかとなったため、追加で若年者のAMHの基準値を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主たる支出となる抗ミュラー管ホルモンの測定を予定人数に至らなかったため次年度使用額が生じた。次年度以降は本年度行うことが出来なかった対象もあわせて測定する予定である。
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