研究課題/領域番号 |
18K15691
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
岩山 秀之 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00757726)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MCT8異常症 / reverse T3 / 早期診断 / 遺伝子治療 / Crispr/Cas9 |
研究実績の概要 |
遺伝性甲状腺疾患であるMCT8異常症は、甲状腺ホルモンを細胞内に運ぶ膜輸送体蛋白(MCT8)の遺伝子異常により発症する疾患である。甲状腺ホルモンが細胞(特に脳神経細胞)で不足するため、脳神経の発達に著明な障害を引き起こす。MCT8異常症は通常、男子でのみ発症するが、患者は歩くこともしゃべることもできない。しかし、現在までに根本的な治療法はなく、分子生物学的手法を用いた治療法の開発が望まれている。そこで、MCT8異常症に対する早期診断、モデルマ ウスの作製、遺伝子治療の開発につき研究を行った。 早期診断については、新生児マススクリーニングで用いる濾紙血を使って、MCT8異常症の早期診断を試みている。現在、正常新生児において、濾紙血から甲状腺ホルモン代謝物(reverse T3)を抽出し、LC-MS/MSにて測定が可能であることを確認した。今後、MCT8異常症患者から得られた濾紙血を用いてreverse T3を測定し、新生児期に濾紙血にてMCT8異常症の早期診断が可能かを調べる予定である。 モデルマウスの作製については、Crispr/Cas9法にて欠失・挿入によりフレームシフト変異が起こり、標的タンパク質が早期に切断蛋白となるノックアウトマウスが得られた。遺伝子変異をサンガー法にて確認し、合計8系統のノックアウトマウスが得られた。現在、その表現型を解析中である。 遺伝子解析については、候補者からの検体提供が得られていない。近年は原因不明の発達遅滞患児において、エクソーム解析など次世代シーケンサーを使用した網羅的な遺伝子解析が中心になっており、1施設のみでサンガー法にて遺伝子解析を行うには限界がある可能性がある。そのため、reverse T3を利用した早期診断法を用いて、大規模解析を行う方針を模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ノックアウトマウスの表現型の解析に時間がかかっている。DNAではフレームシフトを伴う挿入・欠失があり蛋白合成が早期に中断するはずだが、蛋白レベルではWestern blotにて正常蛋白と同じ位置にバンドが検出され、ノックアウトができていない可能性がある。CRISPR/Cas9では定型外翻訳という遺伝子レベルで変異があっても蛋白レベルではほぼ正常の蛋白が作られるという現象が報告されており、現在、得られた8系統に対し解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ノックアウトマウスの解析については、Western blotで用いている抗体の問題がある。現在、OATP1C1には3種類のWestern blotに使用できる一次抗体が販売されているが、そのうち2種類では本実験系において蛋白が検出できなかった。1種類は蛋白が検出できているが、ノックアウトされているはずの試料においても蛋白が同じ位置に検出され解析が進んでいない。そのため、より特異性の高い抗体を新規に作成することを検討しており、数社を比較検討し外注することを予定している。 研究計画では、遺伝子治療の開発も含まれていたが、モデルマウスの作製に遅れが生じており、計画通りに研究が進んでいない状況にある。今後、基礎研究室の連携を強化し、遅れを取り戻すよう計画を修正する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に研究補助員の退職があり、人件費に若干の余りが生じた。金額としては少額であり、次年度の人件費として使用する予定である。
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