研究課題
レット症候群(RTT)は、乳児期に発症し重度知的障害、自閉、てんかん、ジストニアなどを特徴とする神経発達障害で、MeCP2変異が主な原因である。また胃・腸管ホルモンであるグレリンは視床下部からも分泌され神経調節因子として知られている。その役割を解明するために、RTTモデルマウスと対象(野生型マウス)の全脳組織・視床下部・脳幹・胃におけるグレリン・グレリン受容体遺伝子発現をリアルタイムPCR法によって解析をした。両者に有意な差はなかった(平成30年度)。本年度は、絶食ストレス、日内変動下で視床下部・胃における遺伝子発現、また血漿グレリン濃度を確認したが、有意な差はなかった。また、RTTのジストニア、振戦、常同運動は、モノアミン系神経回路の機能異常との関連が示唆されている。申請者はグレリン投与によりRTT患者のジストニア・振戦が改善したと報告した。そのメカニズムを解明するために、グレリン投与によりRTTモデルマウスと対象(野生型マウス)の脳内ドパミン(DA)の変化をマイクロダイアリシス法によって比較・解析をした。その結果、前頭前野領域では、DA及び、ノルアドレナリン(NA)の量に明らかな差はなかった。一方、野生型マウスでは、前頭前野のDA、NAは、新規ストレスによって上昇するのに対して、RTTモデルマウスでは、その上昇が弱いことが明らかとなった。更に、グレリンを投与したところ、野生型及びRTTモデルマウスのDA、NAが上昇した。以上より、DA、NAの分泌能は維持されているが、新規ストレス刺激による反応性が障害されている可能性が考えられた。以上のようにグレリンの神経伝達物質としての機能に着目し、RTTにおけるその影響を評価することはRTTの病態解明へつながる。グレリンは睡眠や自律神経にも影響するとされているため、今後、心拍変動解析や脳波解析を併せて行なう予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究を開始する以前より確立されている手法を用いて実験をしているため、おおむね順調に進展している。
レット症候群の臨床でみられる症状から次の展開を考え実験が進展しようとしている。具体的には睡眠障害、自律神経障害に対する新たな評価系として心拍変動解析、脳波解析を追加して実験を継続、進展させる。
これまでに使用していた物品を使用したため、今年度は物品費がかからず、次年度使用額が生じた。研究計画は比較的順調であり、更なる進展も計画しているため、次年度使用額相当の物品費がかかる予定である。
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J Med Genet
巻: 56(6) ページ: 396-407
10.1136/jmedgenet-2018-105775