研究実績の概要 |
nHIEモデルラット脳内のミクログリア活性化にLOX-1が関与していることを検証することを目的として実験を行った。本究においては、生後7日齢のSDラットを用いて、nHIEモデルラットを作成し、nHIE群および対照群、抗LOX-1中和抗体治療群の3群を作成した。脳切片の免疫染色により、抗LOX-1中和抗体がミクログリアの増殖を抑制することを検証した。 次に、ミクログリアの機能的活性化の一つである、炎症性物質の分泌について検証を行った。ラット脳よりRNAを抽出し、定量PCRによって各RNAの量的な変化を解析した。Olr1は72時間後において中和抗体治療群でnHIE群と比較して減少していた。また、炎症促進性物質(M1マーカー)と考えられるIL-1b, IL-6, Ccl2,TNF-aも72時間後において、中和抗体群でnHIE群と比較して減少していた。一方、抗炎症性物質(M2マーカー)と考えられるIL-10, Tgfb1に関しては、Tgfb1では中和抗体治療群で炎症促進性物質と同様に72時間後の減少が認められたが、IL-10では中和抗体治療群とnHIEで有意な差を認めなかった。 最後に、ミクログリアがその活性に応じて、形態を変化させることを利用し、新たな形態学的解析方法(一つ一つのミクログリアの形態を周囲長、細胞面積、長軸長、真円度といったパラメーターを用いることによって評価)を用いることで、抗LOX-1中和抗体が形態学的にもミクログリアの活性化を抑制することを証明した。 さらに、ヒトHIE脳切片を用いて、ヒトHIEにおいてもミクログリアにLOX-1が発現されていることを確認した。 上記研究成果をまとめ、日本周産期新生児医学会学術集会およびThe American Journal of Pathologyにおいて公表した。
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