研究実績の概要 |
本研究の目的は、特徴的な細胞マーカー所見を示す小児急性白血病/リンパ腫症例に対する詳細な遺伝子解析により、急性白血病/リンパ腫の発症病態の解明に結びつけ、新しい疾患entityとしての確立を図るとともに、得られた解析結果を予後情報と統合的に解析し、治療標的となる遺伝子異常の検索や治療の層別化に利用することで、予後の向上に役立てることにある。 本研究期間内に、特徴的な細胞マーカー所見を示し、既存の解析法で遺伝子異常が検出されない初発時急性B前駆細胞性リンパ性白血病(BCP-ALL)40症例とリンパ腫2症例、再発BCP-ALL8症例について、全トランスクリプトーム解析による網羅的ゲノム解析を行い、MEF2D遺伝子関連融合遺伝子(細胞質内Ig-μ鎖陽性、細胞表面CD5、CD33陽性)、ZNF384関連融合遺伝子(CD10陰性、myeloid抗原陽性)、DUX4融合遺伝子(CD371陽性)、PDGFRB遺伝子やJAK2遺伝子、ABL1遺伝子、PAX5遺伝子に関連した融合遺伝子(フィラデルフィア遺伝子陽性白血病と近似した細胞マーカー所見)、ETV6-RUNX1融合遺伝子(CD10やCD13、CD33、CD27陽性、CD44低発現)について、小児急性リンパ芽球性白血病の細胞マーカー所見と遺伝子異常との関連について明らかにした(Ohki K, et al. Haematologica. 2019 104: 128-137, Ohki K, et al. Genes Chromosomes and Cancer. 2020 May 05; Epub ahead of print. Doi: 10.1002/gcc/22858.)。本研究の成果をその成果を新たな白血病分類法として確立するとともに、予後情報と統合的に解析し、治療標的となる遺伝子異常の検索や治療の層別化に利用することで、予後の向上に役立てる予定である。
|