多能性幹細胞は、その極めてユニークな性質から基礎生命科学のみならず、再生医療、創薬、薬剤毒性検定等次世代の医療開発へ貢献している。しかし、現行の培養方式では分化誘導体に生理活性の機能性を持たせることは極めて困難である。培養ディッシュ内で蠕動様運動、吸収や分泌能などのヒト腸管の機能を有する立体組織(ミニ小腸)の創成に世界で初めて成功した。このミニ小腸は、LGR5陽性腸管上皮幹細胞、腸内分泌細胞、Paneth(パネート)細胞、杯(ゴブレット)細胞やM細胞など生体腸の上皮系細胞を備えるだけでなく、平滑筋細胞、カハール介在細胞や腸管神経叢も有するヒト小腸組織構成に類似した組織構造をもつ。これまで、この独自性の高いミニ小腸基盤技術を応用し、ヒト腸の発生を可視化できるシステムとして小腸幹細胞のマーカーであるLGR5可視化できる多能性幹細胞を作製した。ミニ小腸の分化誘導過程では、LGR5陽性(緑色蛍光)動態を確認することが出来た。小腸上皮組織のみならず粘膜以外の間質部分も成熟化し機能性も獲得したデュアル可視化ミニ小腸を作製した。今年度は、さらに、自然免疫機能を内在するオルガノド作製のため、iPS細胞から単球細胞を分化誘導しミニ小腸へ注入後マクロファージへ分化させる方法を見いだしIBA1陽性細胞を内在するミニ小腸の開発に成功した。炎症惹起試験は、IL-6等のサイトカインが反応し分泌することを確認した。ヒト小腸の機能性ある代替モデルとして、試験管内で反応性の検証をエキソーム解析等のOmics解析を実施することでこれまでにない疾患モデルへ展開できる可能性が示唆される。
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