研究実績の概要 |
本研究はけいれん重積型急性脳症を含む「急性脳症」と、熱性けいれんなどの比較的予後良好の「けいれん性疾患」を発症早期に区別する低侵襲性バイオマーカー探索を目的とし、Cell-free miRNAに着目して両群間の血清/髄液中の各miRNAの発現比較検討を進めている。今年度は研究代表者が所属する東大発達医科学と連携研究施設(東京都医学総合研究所 脳発達・神経再生研究分野 こどもの脳プロジェクト)との共同研究体制で広く急性脳症亜群である難治頻回部分発作重積型急性脳炎(AERRPS)および対照群(けいれん性疾患)の血清を用いてmiRNA Isolation KitでRNAを抽出後、逆転写反応させcDNA化し、ミクログリア関連の中枢性炎症に関連、または脳梗塞の早期バイオマーカーとして報告されている複数の候補miRNA(miR-146a, -146b, -155, -233, -125a, -125b, -143, -21)を選択し、Real-time PCRで定量解析を行った。解析データは比較Ct法で3つのリファレンスmiRNA(Ce-miR-39_1, miR-15b, SNORD61)を用いて両群間の各miRNA発現を比較した。現時点の研究結果としてはCe-miR-39_1の補正によるmiR-125aがAERRPS群で有意に上昇していた(p=0.028)。また、miR-15b, SNORD61の補正による解析においてもmiR-125aが疾患群で高発現の傾向がみられた。現在はPathway miRNA arrayを用いたより網羅的なmiRNAの発現検討や、解析に用いるリファレンス遺伝子の再検討を進めている。また多施設の協力を得てAERRPS以外の他の急性脳症症候群の血清・髄液の集積も進めており、今後は症候群別の発現の相違についても検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は候補miRNA(miR-146a_1, miR-146b_1, miR-233, miR-125a_1, miR-125b_1, miR-21_1 等)におけるPCR定量解析とComparative CT法を用いた両群間の発現比較検討を進めた。またPathway miRNA arrayを用いたより網羅的なmiRNAの発現比較を進めるための一連の実験条件はほぼ確立した。症例・対照群の血清を用いたより網羅的な発現解析を継続し、また血清に恒常的に安定発現するリファレンス遺伝子の再検討も進めている。またAESD含めた他の急性脳症群に対するサンプル集積も整いつつあり、今後も広く症候群別においても有用なmiRNAをターゲットとしたバイオマーカー探索研究を深めていく準備が整っている。
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