研究課題
本研究はけいれん重積型急性脳症を含む「急性脳症」と、熱性けいれんなどの比較的予後良好の「けいれん性疾患」を発症早期に区別する低侵襲性バイオマーカー探索を目的とし、Cell-free miRNAに着目して両群間の血清/髄液中の各miRNAの発現比較検討を進めている。今年度は研究代表者が所属する東大発達医科学と連携研究施設(東京都医学総合研究所 脳発達・神経再生研究分野 こどもの脳プロジェクト)との共同研究体制で広く急性脳症亜群である難治頻回部分発作重積型急性脳炎(AERRPS 10例)および対照群(小児てんかん 10例)の血清を用いてPathway-focused miRNA PCR Arrayで148のmiRNAをリアルタイムPCRで定量解析した。解析データは恒常的に発現する3つの補正用miRNA(Ce-miR-39-3p, miR-15b-5p, miR-21-5p)を用いて比較Ct法で各miRNA発現を両群間で比較した。本研究でmiR-124-3p、miR-372-3p、miR-145-5pは難治てんかん群と比較しAERRPS群で有意に高発現、miR-215-5pは有意に低発現を示し、両群を区別するバイオマーカー候補となる可能性が示唆された。現在はけいれん重積型急性脳症(AESD)と対照群(熱性けいれん)を対象にHuman and Serum Pathway miRNA arrayを用いて91のmiRNA発現解析を行っており、二群間でのmiRNA発現の比較解析を行う予定である。またサイトカイン・ケモカインなどの従来のバイオマーカーとmiRNAの相関についても検討を深める予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度はPathway miRNA arrayを用いた網羅的なmiRNAの発現比較を進めるための一連の実験条件を確立し、Comparative CT法を用いたmiRNA発現比較解析において血清に恒常的に安定発現するリファレンス遺伝子も定まった。それにより集積した急性脳症症候群の血清試料について網羅的なmiRNA解析を実施できているため。
次年度はAESD群と対照群(熱性けいれん:FS)の血清試料を用いて二群間で網羅的なmiRNA発現の比較解析を行う方策である。また症例の髄液試料を用いたCell-free miRNAに着目した診断バイオマーカー探索の実験条件を確立し研究を発展させる方策を検討している。①Human and Serum Pathway miRNA arrayを用いて91のmiRNA発現について比較②Bio-Plexシステムを用いて同血清試料内のサイトカイン・ケモカインを測定し、miRNA発現との相関について検討③髄液試料からのcell-free RNA抽出一連の実験条件を確立
髄液試料内のCell-free RNAは血清試料と比較し低発現を示すことから、miRNA発現解析を実施するためにRNA・cDNA抽出手順において新たな実験系の確立が必要となるため実験試薬購入費として使用計画中である。国内外の学会参加費としても支出予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Brain Dev.
巻: 42(7) ページ: 508-514
10.1016/j.braindev.2020.04.006