研究課題/領域番号 |
18K15701
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐野 史和 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (00622375)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | てんかん / アストロサイト |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに、ピロカルピン誘発性側頭葉てんかんモデルマウスを用いて、てんかん原生獲得機構においては、けいれん重積誘発早期に活性化するミクログリアと、活性化ミクログリアが誘導する慢性期の異常活性化アストロサイトの機能異常が重要である可能性を見出している。 本年度は、磁気細胞分離法を用いて海馬からアストロサイトを分離しRNAを抽出する系を確立した。また、側頭葉てんかんモデルマウスのアストロサイトからmRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行うことで、てんかん原生型アストロサイトの分子プロファイルを網羅的に解析することができた。また、解析結果からアストロサイト性のてんかん関連候補分子を200遺伝子前後リストアップした。このうち、薬理学・分子生物学的操作が可能である候補遺伝子10遺伝子前後について、qRT-PCR法を用いて発現変動の有無について再現性を確認した。 次年度以降、候補遺伝子の分子産物についてそれらの薬理学・分子生物学的操作が、アストロサイトのCa2+興奮性及び神経活動に与える影響を、海馬急性スライス標本(ex vivo)を用いて解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するには、①ピロカルピン誘発性側頭葉てんかんモデルマウスのてんかん原生獲得期における活性化アストロサイトの網羅的機能解析、②活性化アストロサイトが神経細胞の過剰同期性興奮(てんかん発作)を引き起こす分子機構を解明することが必要である。 本年度では、当初の計画通り、ピロカルピン誘発性側頭葉てんかんモデルマウスのてんかん原生獲得期における活性化アストロサイトの網羅的機能解析から、てんかん原生獲得に関わる複数の候補遺伝子をピックアップできた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、てんかん病態時の活性化アストロサイトの異常活動と神経細胞の過剰同期興奮(てんかん発作)との因果関係を分子レベルで明らかにすることを最大の目的としている。つまり、「てんかん原生の分子病態を活性化アストロサイトの視点から明らかにする」ものである。次年度は、当初の計画に沿って、トランスクリプトーム解析により得られた発現変動遺伝子(とその分子産物)に対して、in vivoおよびex vivoでの機能解析を追加検討することで、アストロサイトを標的とした新規抗てんかん薬の候補を探索していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016-2017年度の科研費課題(若手研究(B):てんかん原生獲得における活性化ミクログリア機能の解明)の一部を2018年度に繰り越したため、本予算の消費が少なかったため。一方で、当初の想定と比較して、トランスクリプトーム解析により得られた発現変動遺伝子数が多かったため、どの遺伝子に対してより詳細な評価をすべきかの予察的検討を行う必要がある。従って、当初計画を上回る数のqRT-PCRを次年度に行う予定としている。
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