X抗原特異的CAR-T細胞については、培養法の改良を行った。具体的にはフィーダー細胞の変更と刺激方法、刺激及びサイトカイン添加のタイミングを改良することより、CAR遺伝子導入効率の改善および、最終CAR陽性T細胞産物の細胞数の増加を得ることができる培養法を確立した。樹立したCAR-T細胞は、比較的幼弱な表面形質を示す上、PD1どのT細胞疲弊マーカーをほとんど発現していないことを示した。また、X抗原を発現する腫瘍に対し、in vitro共培養実験において特異的な抗腫瘍効果が得られることを示した。また、X抗原発現腫瘍細胞株を用いて、担癌モデルを作製した。NSGマウスにX抗原陽性腫瘍を皮下注したところ、腫瘍の生着を確認できた。また腫瘍溶解ウイルスの代替技術として、腫瘍選択性ナノ粒子の開発に取り組んだ。このナノ粒子は、膜の組成を調整することで、腫瘍選択的に取り込まれる性質を有している。ローダミンで標識したナノ粒子を腫瘍細胞と共培養したところ、ナノ粒子は24時間後に腫瘍に効率よく取り込まれる一方、正常末梢血単核球にはほとんど取り込まれないことが分かった。また、ナノ粒子に、firefly luciferase mRNAを導入し、腫瘍細胞と共培養したところ、腫瘍細胞において高効率にluciferase活性がみられることが分かった。一方、正常細胞ではほとんどluciferase活性がみられず、腫瘍細胞選択的なmRNA導入が行えることを確認した。この結果から、今後はこのナノ粒子を用いて腫瘍選択的に治療遺伝子を導入し、腫瘍細胞を遺伝子改変したうえで、CAR-T細胞の抗腫瘍効果を向上させるように取り組んでいく。
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