重症筋無力症(MG)は、T・B細胞の両者が関与する自己免疫疾患である。成人MGと小児MGには臨床上多くの差異があり、病態が異なると考えられているが詳細は不明である。申請者らのグループは、小児眼筋型MGの病態にB細胞活性化因子(BAFF)が関与していることを報告した。BAFFはB細胞のアポトーシスに抑制的に作用する分子で、様々な自己免疫疾患の病態に関与しているだけでなく、分子標的療法のターゲットとしても注目されている。小児MG症例を多数例集積し、免疫学的発症機構および増悪機構を解明することで、より有効で合併症の少ない治療の開発につなげることを目的として、申請者は以下の研究を立案した。(1)全身型や難治例を含めた小児MG症例において、免疫学的背景を多数例で解析する。特に、BAFFなどB細胞に関わる異常の有無を明らかにする。T細胞を抑制するタクロリムスに不応な症例ではB細胞の異常が主因であるという仮説を立て、その正誤を明らかにする。(2)上項をもとに小児MGの免疫学的病態を明らかとし、より有効で合併症の少ない免疫抑制療法の標的となり得る分子を明らかとする。 2018年度は本研究遂行のために小児MG患者の登録を進め、計27名の患者を登録し、臨床情報の収集・解析および検体保存を行った(全身型患者も7名)。 2019年度は引き続き患者登録を進め、患者は計28名となった。全身型は8名。バイオマーカーの解析に向けてフローサイトメーターの設定を行い、ELISA測定器の調整も進めた。 2020年度は計28名の患者の検体についてバイオマーカーの測定・解析を行った。昨年度の報告の通り、ELISA測定器の吸光度フィルターの納品が遅れたこと、申請者の仕事の状況が変化したため、本研究にあてるエフォートが下がったため、研究期間中に学会発表・論文投稿ができなかった。2021年度中には論文投稿・学会発表を行う方針。
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