研究課題
脈管異常は先天性の脈管異常疾患で、血管腫内で異常な血液凝固が起こり、血小板減少や血栓を形成するが、そのメカニズムは未だ不明である。特に小児血管性腫瘍に合併するカサバッハメリット現象(Kasabach-Merritt Phenomenon: KMP)は重篤な凝固異常を呈し、致死率も高いが、対症療法のみとなっている。我々は他の脈管異常に合併する凝固異常とKMPとの違いに着目し、凝固異常に伴うサイトカイン分析および、新規治療薬投与後の凝固異常について解析した。その結果を論文で公表した。凝固異常のある脈管異常症例の血液を用いて、血小板凝集能試験を行った。またCLEC-2、血管・リンパ管新生に関わるマーカー(VEGF-A、C、D、MMP2、9、 Angiopoietin1、2、BMP-9、EGF、Endoglin、Endothelin-1、FGF-1、FGF-2、Folistatin、HB-EGF、PLGFなど)などをELISA測定キット(R&Dなど)およびマルチプレックスアッセイシステムを用いた解析パネル(MILLIPLEX)によって網羅的に解析した。近年、これらの疾患は病理学や遺伝生物学的な研究の発展に伴い、原因や病態が徐々に解明されてきている。しかし、もともとこれらの疾患は皮膚科、形成外科の医師が診療することが多い。そのため、特に凝固異常に関しては、研究が進んでいないのが実情である。我々は小児科の中でも血液腫瘍学を専門としているため、脈管異常に起こっている凝固異常を、本体から理解し研究をすることが可能である。国内外においても、この点に注目して研究を行っている施設はほとんどなかった。一方で、mTOR阻害剤であるシロリムスの難治性脈管異常に対する有効性は極めて高く、ブレークスルーになると期待されている。その有効性を検証するための臨床試験は海外で行われてきつつあり、今後さらに注目されるだろう。また本薬の薬理作用に関する研究報告はほとんどないため、本研究は非常に意義深かったと考える。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
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