研究課題
2020年度は、2019年度に引き続きヒトiPS細胞の培養系の確立を行い、ニューロンおよびミクログリアへの分化と、各分化段階における細胞特性の評価を、免疫染色による細胞形態の評価、ミクログリアの増殖能・遊走能・貪食能等についての細胞培養系での評価、検討を行っている。また、CRISPR-Cas9を用いたiPS細胞におけるHPGDS, DP1の発現調節実験を現在行っている。現在まだ進行中ではあるが、HPGDS、DP1の発現操作を行ったiPS細胞より分化させたミクログリアおよびニューロンで、同様に形態学的評価、貪食能をはじめとした細胞機能評価を行って、コントロールと比較検討を行うことにより、細胞特性の変化が検出できることが期待される結果が得られてきている。HPGDS, DP1の発現操作を行ったニューロン、ミクログリアにおいて、その細胞特性の変化が明らかにできれば、自閉スぺクトラム症においての関与が推測されるHPGDS-PGD2-DP1経路の、発生段階におけるニューロンによる神経回路形成およびミクログリアによるシナプス刈込の影響についての解明に近づくことが出来る。本研究計画では、さらにHPGDS,DP1の発現操作を行ったiPS細胞由来のニューロンとミクログリアの共培養を行い、両者の相互作用について解明することを目的としているが、2020年度は共培養実験のための準備は進めることが出来たものの、実際の共培養実験を行うにはいたらなかった。2021年度には実際にHPGDS, DP1の発現操作をしたiPS細胞およびコントロールiPS細胞よりそれぞれニューロン、ミクログリアへ分化誘導した細胞を用いた共培養実験を進める予定である。
3: やや遅れている
iPS細胞の培養系、ニューロン・ミクログリアへの分化と細胞解析に、予定より時間を要してしまっており、三次元培養系の実験まで進めていない。当初の3年間の予定を2021年度まで継続して、研究の推進と成果の公表を急ぐ。
現在までも、研究代表者と大学院生で実験を進めるだけでなく、学内の他研究室にも技術的支援を受けながら研究を進行している。2021年度も継続して、技術的な助言等を受けながら、効率よく三次元培養実験を進める。三次元培養には時間がかかるため、2021年度早期よりこの実験を開始できるよう周到に準備を行って実験を行う。なお、2021年度には、研究成果の公表を目指す。
研究の進捗に遅れが出たため、本年度までに行う予定であった実験が次年度にずれ込んだこと、学会等の旅費として計上していた予算がCOVID-19の影響でweb開催等になり、移動がなかったことから、2021年度に引き続き研究を遂行し、研究成果の公表を行うために次年度使用額が発生した。2021年度は学会発表費(登録費、旅費を含む)、論文発表のための投稿・校正にかかる費用以外は、物品費として使用することを予定している。
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eLife
巻: 9 ページ: e62199
10.7554/elife.62199
Neuron
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