研究実績の概要 |
胎便性腹膜炎は、胎生期の腸管穿孔により、無菌性の胎便が腹腔内に漏出して生じる化学性腹膜炎と定義され、非感染性の特異な炎症性疾患である。一方、その病態を正確に反映する動物モデルが無く、その病態生理は明らかではない。本研究では、Cecal Slurry法による敗血症モデルマウス作成技術を応用して、ヒト胎便懸濁液(Meconium slurry, MS)の腹腔内投与による胎便性腹膜炎モデルマウス作成を試みた。 動物実験委員会の承認および代諾者の同意のもと、正期産児の(1)オムツに排泄された残余胎便、(2)肛囲刺激により排泄させた新鮮胎便を、500mg/mlの濃度でPBSに懸濁し、MS1(残余胎便)、MS2(新鮮胎便)を各々作成した。次いで、ヒト早産児相当の4日齢マウスへMS1、MS2を200μL腹腔内投与し、3h後の血液ガス所見、24h後の体重増加率、7日間生存率につき、同量のPBS投与群(Veh群)と比較した。 結果は、(1)MS1を投与しても、新生仔マウスに病的状態は誘導されなかった。(2)一方、MS2を腹腔内投与した場合、Veh群と比較して、体重増加率の減退(MS; 0.8±7.5% vs. Veh; 21.1±4.9%, p<0.0001, 各群n≧21)、Lacの上昇(6.5±1.6 vs. 3.5±0.3, p<0.01, 各群n≧5)、死亡率の増加(41.2% (n=34) vs 0% (n=22), p<0.001)を認めた。 現在までの結論として、残余胎便ではなく新鮮胎便からMSを作成することで胎便性腹膜炎を模倣するモデルを作成することができた。残余胎便においてオムツ内で失われた含有消化酵素等の因子が、本疾患の病態に欠かせないと考えた。
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