研究課題
今年度は、主に既に保存されていた血液検体を用いた急性脳症における炎症性サイトカインの網羅的解析を行った。今年度の補助金は、主に上記のサイトカイン測定の試薬の購入費に充てられた。また、分単位で記録された臨床データと照合された患者検体を継続的に回収した。Bio-Plex Pro Human Chemokine PanelでIL-1β, IL-6, IL-10, TNF-αなど27項目の炎症性サイトカインの網羅的解析を行った。IL-1β, IL-6などの炎症性サイトカインも、IL-10などの抗炎症性サイトカインも、神経症状出現から24時間以内にダイナミックに変動することが確認された。IL-6のピーク値はサイトカインストーム型急性脳症では約1000-3000pg/mLであり、神経症状出現の10-20h後にピークとなることが確認された。けいれん重積型急性脳症ではIL-6のピーク値は20-300pg/mLであり、神経症状出現の2-6h後にピークとなることが確認された。一方、集中治療の結果として後遺症を残さず熱性けいれんと最終診断された症例でもIL-6は1000pg/mL以上の高値になる症例があり、初期の炎症の程度が同程度でも、後遺症を残して急性脳症と診断される症例と後遺症なく回復して熱性けいれんと診断される場合があることが示唆された。上記のように、臨床データと照合した症例蓄積と検体の回収システムが確立し、急性脳症における炎症性サイトカインの網羅的解析を行うことができた。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画で予定していたように症例蓄積と検体回収が順調にすすみ、臨床データと検体情報を照合するシステムも確立した。さらに、急性脳症の患者血清でのサイトカインを網羅的に測定し、分単位での解析を行うことにも成功したので、おおむね順調に進展しているといえる。
今後も新たな症例蓄積と検体の回収を継続的に行い、症例数を増やして解析を行う。さらに、髄液検体を用いた解析を行うことも計画している。並行して、患者血液検体からのマクロファージやミクログリアへの誘導と炎症応答の解析も計画している。
今年度は当初の予定よりも検体数が少なかったためサイトカイン測定のための試薬代が少なかった。細胞培養にともなう試薬や物品費も当初見込んでいたよりも安く利用することができたため、今年度は使用額が少なかった。次年度は、サイトカイン測定の検体数が増加する予定であるため、より多くの費用を要する見込みが高い。また、研究打ち合わせや研究成果発表のための旅費などの費用もより多くを要する可能性がある。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)
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