研究課題
Frasier症候群は晩発性で緩徐に進行する腎障害、男性性分化異常およびWilms腫瘍や性腺腫瘍の発症を特徴とする症候群であり、現在まで特異的治療法は存在しない。そのため本研究では、Frasier症候群を認める発症頻度や変異の部位による表現型の違いを明らかにするとともに新しい治療法の開発を目指し実験を行った。次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子腎診断体制を確立し、平成26年からSRNSにおける依頼検体は令和2年2月の時点で326検体に達した。WT1遺伝子変異を有する症例が最多で23検体であった。また、そのうち9例でFrasier症候群と診断し、変異の部位は6例がIVS9+4の変異、3例がIVS9+5の変異であり明らかな臨床症状の差は認められない。Frasier症候群において、変異の部位ごとのスプライシング異常発生メカニズムの解明を行うためWT1遺伝子エクソン9を含んだminigene constructを作成した。このminigene constructを使用し、mutagenesisにより既報のWT1遺伝子イントロン9の変異を挿入した。その後、培養細胞にトランスフェクトし、mRNAを強制発現させる実験を行った。結果は、正常配列を導入した細胞からは正常トランスクリプトおよび-KTSmRNAの両方が検出されたが、各変異を導入した細胞からはすべて-KTSmRNAのみが検出された。変異の部位による-KTSmRNA発現パターンの変化は見られなかった。既報のFrasier症候群における遺伝子変異の部位による臨床的重症度に差は見られず、今回のin vitroでの解析は臨床での表現型を裏付ける結果となった。現在、治療法の開発として+KTSスプライシング産物の増加を目指しKTSのバランスが補正することが治療に応用出来るのではないかと考えアンチセンス治療薬を試行中である。
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Scientific Reports
巻: 10 ページ: 270
10.1038/s41598-019-57149-5.