亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は、麻疹ウイルス変異株(SSPEウイルス)の持続感染による遅発性ウイルス感染症である。国内では、当施設を中心にIFN-αおよびリバビリンの脳室内投与療法が実施されているが、臨床効果は十分とは言えず、新たな治療薬が望まれている。本邦で抗インフルエンザ薬として開発され臨床利用されているファビピラビルは、RNAウイルスに広く活性があり、in vivoとin vitroにおいてリバビリンよりも高い抗ウイルス活性があると報告されている。本研究では、SSPEに対するファビピラビルの効果を細胞レベル及び本施設のみで確立されているSSPEの動物モデルを用いて評価し、SSPEに対する安全で有効な治療法を確立することを目標としている。現在まで、in vitroにおいてファビピラビルとリバビリンの麻疹ウイルス実験室株(Edmonston株)とSSPEウイルス臨床分離株(SSPE Yamagata-1株)に対するウイルス増殖阻害効果を検討した。ファビピラビルとリバビリンの50%効果濃度(EC50)はそれぞれ、野生株では、109.4μM、117.8μM、変異株では、40.4μM、42.4μMであり、ファビピラビルの50%細胞障害濃度(CC50)は、野生株で>1000μM、変異株で>1000μMであった。in vitroにおいて、ファビピラビルは、麻疹ウイルスとSSPEウイルスにリバビリンと同等のウイルス増殖阻害効果を認め、高濃度においても細胞毒性がないことを確認している。今後は、SSPEウイルスに対するファビピラビルの効果を評価するために、SSPEの動物モデルを用いてファビピラビルのウイルス増殖阻害効果と発症予防・治療効果を検討する予定である。
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