研究課題
【目的】Fontan手術は機能的単心室に対する修復術であるが、その術後遠隔期に従来の肝機能検査では予測できない肝線維化、肝硬変や肝細胞癌などの肝合併症を生じることが近年明らかになってきた。今回我々は、Fontan術後遠隔期の肝合併症に対する超音波エラストグラフィの有用性を検討し、同疾患に特化した肝硬度のカットオフ値の設定を目指している。【当該年度の成果】Fontan術後患者61名(中央値11.5歳;4.2-32歳)に超音波エラストグラフィを用いて肝硬度(LS)を測定した。61名のLS(中央値13.2 kPa;4.6-45,施設基準値<8kPa)は術後年数に伴い上昇し、術後約10年以降はプラトーに達した。肝生検を実施した15名のLSは中央値20.5 kPa(12.1ー39.8)であり、肝病理所見では肝硬変例はなく、8名(53%)は高度な線維化(類洞域あるいは門脈域の線維化≧stage3)、3名(20%)は中程度の線維化(類洞域及び門脈域の線維化≧stage2)、4名(27%)は軽度の線維化(類洞域あるいは門脈域の線維化<stage2)を呈していた。LSと4型コラーゲン7Sは、軽度な線維化群と比較して中程度から高度の線維化群において有意に高値を示したが、それ以外の線維化マーカーに関しては各線維化群間での有意差は認めなかった。また、LSと中心静脈圧及び肝静脈圧較差との関係は正の傾向を示した。【考案】LSおよび4型コラーゲン7S は、Fontan術後患者において線維化のスクリーニングに有用なことが示唆された。一方、LSは中心静脈圧の影響を受けるため、B型C型肝炎で提唱されるLSのカットオフ値でFontan術後患者の肝線維化を評価することは過大評価につながり、独自のカットオフの設定が必要である。
1: 当初の計画以上に進展している
予定数の生検組織が採取でき、肝硬度との対比ができている。当初の仮説どうり、Fontan術後の肝線維化の評価には従来の線維化マーカーの信頼性が低いことも明らかとなった。さらに、肝硬度の関しても、C型B型慢性肝炎におけるカットオフ値を使用するのは過大評価につながるため危険であり、Fontan術後患者に特化したやや高めのカットオフ値が必要なことも明確となった。
さらに数例生検組織を増やす予定である。それにより、カットオフ値を算出する予定である。また、本研究を発展させ、生検組織を用いたFontan術後患者に特化したバイオマーカーの開発も期待できる。
予定していた血清の各種マーカーの測定を、サンプル数がまとまってから一度に行うために本年度は凍結保存としており、その分の未執行額が発生した。次年度以降、予定していた血清の測定等を行う。
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