研究課題
Fontan手術は、年間400件以上国内で施行されている先天性心疾患に対する姑息手術であり、術後遠隔期に肝硬変を生じることが近年問題とされている.本研究では,超音波エラストグラフィを用いて体表から肝硬度を測定することによって術後患者の線維化を正確に評価し得るかどうかを検討した。58名のFontan術後患者(年齢中央値11.1歳;4.2-32.0歳)に経時的に合計168回の肝硬度測定を実施したところ、肝硬度は術後10年まで経時的に増加し、その後プラトーに達する傾向が明らかとなった。肝硬変を示唆する肝硬度(11kPa以上)を呈する患者のうち、22名のFontan術後患者(年齢中央値14.7歳;9.9-32.1歳)に同意を得て肝生検とカテーテル検査を実施し、組織学的肝線維化スコア(congestive hepatic fibrosis socre; CHFS)、中心静脈圧、門脈圧(肝静脈圧較差)の各結果と肝硬度ならびに血液データとの関連性を解析した。その結果、全ての患者に軽度から高度な線維化が類洞から門脈域に認められたものの、肝硬変を呈する患者はなく、肝硬度はCHFSとの関連性はみられなかった(p=0.175)。肝硬度は中心静脈圧とも関連性は認められなかったが(p=0.456)、門脈圧とは関連性を示す傾向が認められた(p=0.062)。また、各血液生化学的線維化マーカー(M2BPGiなど)はCHFSとの有意な関連性は認めなかった。以上から、Fontan術後には類洞から門脈域にわたる特異な線維化が高頻度に認められるものの、従来有用とされる肝線維化指標(血液生化学マーカーや肝硬度)は有用ではなく、肝硬度に関しては門脈圧の影響を受けるため線維化との関連性が低下することが示唆され、Fontan術後に特化した新たなバイオマーカーを開発する必要がある。
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Hepatology Research
巻: - ページ: -
10.1111/hepr.13627
肝胆膵
巻: 82 ページ: 441-449
https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2020/210307