研究課題/領域番号 |
18K15726
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
大西 智子 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (60645589)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DICの病型分類 / CFWAとT/P-GAの相関性 / 新規病型分類 / 包括的凝固線溶動態 |
研究実績の概要 |
DIC症例に対して、包括的な凝固能と線溶能を同時に評価可能な凝固線溶波形解析(CFWA)、トロンビン・プラスミン生成試験(T/P-GA)を用いて評価した。DIC症例は56例で、基礎疾患は敗血症46例、血液腫瘍2例、大動脈瘤2例、肝不全2例、血栓性微小血管症(TMA)3例、大量出血1例であった。 まずCFWAを実施した。パラメータは、最大凝固速度(min1)、最大線溶速度(max1)を用い対正常血漿比で評価した。その結果、DICをtype1(相対的な凝固能優位 min1比>max1比)、type2(凝固線溶能が均衡min1比≒max1比)、type3(相対的な線溶能優位min1比<max1比)、type4(凝固線溶能の崩壊)の4typeに病型分類することができた。 次にCFWAの各病型におけるトロンビン・プラスミン生成試験(T/P-GA)の動態を評価した。T/P-GAのパラメータとして、凝固能はpeak slope(T-slope)、線溶能はpeak値(P-peak)を用い対正常血漿比で評価した。 CFWAでtype1と分類された症例のうち、70.7%がトロンビン生成優位であった。同様に、type3と分類された症例のうち、100%でプラスミン生成優位であり、type4では75%でトロンビン/プラスミンの両生成が著しく低下していた。一方、type2に分類された症例は、トロンビン/プラスミン生成バランスが均衡している症例はなかった。 CFWA分類による凝固線溶不均衡タイプのDICではトロンビン/プラスミン生成能バランスと概ね相関し、CFWAでの線溶抑制ないしは亢進パターンがT/P-GAでも確認できた。一方で凝固線溶均衡型では、必ずしもトロンビン/プラスミン生成バランスと一致せず、臨床所見と合わせた評価や、同一患者での経過の評価などの検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例は順調に蓄積されており、測定も順次実施しており予定通り進行中である。 さらに多くのデータで検証する必要があるため、現在も症例蓄積中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き症例を蓄積し、DICの新規病型分類を裏付けるデータをとる。 また今年度よりDIC治療への応用を進めていく。その方法として、まず患者血漿にDIC治療として臨床的に使用されているリコモジュリン製剤(rTM)を、濃度勾配をつけて添加する。添加前後の反応を評価し、病型分類と添加前後の反応から、症例ごとのrTM製剤の適正量を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体の回収および測定は予定通り進んでおり、予定額を使用することができた。
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