研究課題/領域番号 |
18K15729
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
小林 信吾 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (00464727)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 高濃度酸素性肺傷害 / ピルビン酸脱水素酵素 / 新生児慢性肺疾患 / メタボローム |
研究実績の概要 |
ルームエアまたは高濃度酸素に暴露した新生仔および成獣肺から抽出した代謝産物についてメタボローム解析を用いて解析した。4つの群(①ルームエア―新生仔、②高濃度酸素―新生仔、③ルームエア―成獣、④高濃度酸素―成獣)により異なる代謝産物のパターンが示された。 全代謝経路の中で、解糖系代謝経路に注目し、新生仔肺と比較して、成獣肺では、高濃度酸素暴露後、3-ホスホグリセリン酸(Phosphoglyceric acid、PG)、2-PG、ホスホエノールピルビン酸(phosphoenolpyruvate、PEP)、乳酸の値が増加した。一方で、新生仔肺では高濃度酸素暴露の有無で解糖系代謝産物量に有意な変化は認めなかった。 上記で示した高濃度酸素暴露後の新生仔肺と成獣肺内の代謝産物量の違いはPDH活性の違いによるものであるとの仮説のもと、マウス肺内のPDH活性とPDHを負に制御するPDK4のmRNA発現レベルを定量した。高濃度酸素暴露により、成獣マウス肺ではPDH活性が抑制された。一方、新生仔肺では高濃度酸素暴露によるPDH活性の変化は認めなかった。高濃度酸素暴露後の新生仔肺と比較して暴露後成獣肺では、PDK4 mRNA発現レベルが有意に高かった。新生仔肺と比較して、成獣肺では、高濃度酸素暴露によりPDK4 mRNA発現が増加することにより、PDH酵素活性が負に制御され、その結果、その上流の代謝産物である3-PG、2-PG、PEP、乳酸が蓄積することが示唆された。 新生仔マウス肺と比較して、成獣肺では高濃度酸素暴露によりPDK4 mRNA発現が増加することによりPDH酵素活性が低下することから生じることが示唆され、このことが新生仔と成獣マウス間の高濃度酸素に対する耐性の差の一因である可能性があると結論付けた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全くトラブルなく、当初の研究計画通り順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はジクロロ酢酸投与またはPDK4ノックアウトマウスを利用して、PDK4を抑制することにより高濃度酸素性肺傷害を回避することを示し、新生児慢性肺疾患や急性呼吸窮迫症候群等の新規治療法の開発へと推進していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、研究計画通りおおむね予定通り順調に進行し、使用額も予定通りで、生じた次年度使用額はわずかである。来年度も研究計画通り、支出していく予定である。
|