研究課題/領域番号 |
18K15739
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
粂井 志麻 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (00548969)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 内臓痛覚過敏 / 鬱様行動 / 1-methylnicotinamide |
研究実績の概要 |
2018年度の研究では、過敏性腸症候群(IBS)モデルのラットにPGI2受容体(IP)作動薬を投与すると内臓痛覚過敏と鬱様行動が軽減することを明らかにした。2019年度は、そのメカニズムを解明するため、炎症性サイトカインと血中代謝産物に着目した。
IBSの病態の一部に血中・腸管内の炎症性サイトカインの上昇が関与するという報告やIP作動薬が強い抗炎症作用を有することから、本研究で用いたIBSモデルラットの血中、腸管粘膜の腫瘍壊死因子 (TNF)α、Interleukin (IL)-1βの測定を行った。しかし、いずれの炎症性サイトカインも本IBSモデルの血中、消化管粘膜中の増加を認めずIP作動薬の作用起点とは考えられなかった。 次に2018年度の4群(対照群、IBS群/ IP作動薬投与グループ、生理食塩水グループ)を比較して得られたメタボローム解析結果より、内臓痛覚過敏と鬱様行動に関与する代謝産物の候補として絞り込まれた1-Methylnicotinamide (MNA)について検討した。これまで、研究代表者が調べた範囲ではMNAと内臓知覚の関係を示す報告はなかった。そこで、まず健常ラットに連日MNAを経口投与しIBS様症状が引き起こされるかを検証した。MNA投与群の体重は対照群と差はなく、腸管の肉眼所見における変化を認めなかったが、MNA投与群では、有意な内臓痛覚閾値の低下を認め、内臓痛覚過敏が出現した。さらに興味深いことにMNA投与群では、強制水泳試験による鬱様行動も増加していた。一方、単回のMNAの脳室内投与では、これらのIBS様症状は出現しなかった。 以上より、本IBSモデルによる内臓痛覚過敏や気分障害出現のメカニズムの一部に末梢臓器におけるMNAの関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の休職により2019年10月以降、実験が中断しているため。
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今後の研究の推進方策 |
どのようにしてMNAの末梢投与が内臓知覚と気分障害を制御しているのか不明であり、さらなる研究が必要である。また、2018年度に得られたIP作動薬投与による腸内環境の変化とIBS病態への関与の有無も明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の休職により、2019年10月以降実験を中断し研究が当初の予定よりも遅れてしまったため。
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