研究実績の概要 |
難治性の潰瘍性大腸炎(UC)にはタクロリムスか抗TNFα抗体による治療が行われるが、その反応性は個人間で差が認められるものの、それを予測するすべがないため治療選択は主治医の主観で決定されることが多い。申請者は候補遺伝子解析によってタクロリムスの薬剤代謝に関しては代謝酵素の遺伝子多型が血中濃度(CYP3A5)や治療効果(ABCB1)と相関し、それが個人差の要因の一つとなっていることを報告した。しかし、これまでUCにおけるタクロリムスや抗TNFα抗体の治療効果に影響を及ぼすゲノムワイド相関解析(GWAS)は行われていない。本研究では治療効果と相関する臨床背景や新たな多型をGWASで明らかにし、そこから治療反応性予測モデルを作成する。 これまでに、抗体製剤を使用した78例と、タクロリムスを使用した93例のゲノムDNAを採取し、ジャポニカアレイによる解析を行った。また、これらについては、精度管理処理後に、主成分分析(Principal component analysis, PCA)によって、集団の遺伝的背景とは明確に異なる遺伝背景をもつ検体の有無を確認し、除外すべき症例がないことを確認の上、2KJPNデータを使用した、Imputationを行い、ゲノムワイド解析を行う準備を整えた。対象症例の臨床データとして、性別、年齢、体重、診断時年齢、罹患範囲、薬物使用量、タクロリムスのトラフ値、副作用、併用薬剤、ステロイド依存or無効、治療開始前の疾患活動性スコア(DAI)の集積を行った。現在、治療開始後12週、54週のDAIスコアの集積を行っている。
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