研究課題/領域番号 |
18K15741
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中塚 拓馬 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50772042)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 肝癌 / ヒストン修飾 |
研究実績の概要 |
肝癌は再発が多い難治癌のひとつであり、特に進行肝癌に対しては未だ治療選択肢が限られており新規治療法の開発が望まれる。多くの肝癌は慢性肝炎を背景として発症するが、慢性炎症により惹起されるエピゲノム異常の蓄積は前癌状態から発癌に至る過程で重要な役割を担うことが分かってきた。本研究の目的は肝発癌におけるエピゲノム異常の意義について明らかにし、エピゲノム異常をターゲットとした新規治療法開発への橋渡しとなる成果を得ることである。平成30年度は以下の研究成果を得ている。 1.TCGAデータおよび当施設で保有する肝癌組織検体を用いた検討により、ヒストンメチル化酵素G9aが肝細胞癌において著明に発現が亢進していることが分かった。 2.肝細胞特異的G9aノックアウトマウスを樹立した。G9aノックアウトマウスでは、肝細胞におけるヒストンメチル化レベルが著明に減弱していたが、マウス発生や発育過程においては特に影響を及ぼさなかった。G9aノックアウトマウスに対しジエチルニトロサミンと四塩化炭素により肝発癌を誘導したところ、野生型マウスに比較して肝発癌が著明に抑制された。 3.上記ジエチルニトロサミン誘導性肝発癌は、G9a阻害剤の投与によっても著明に抑制された。G9a阻害剤投与を行ったマウス肝において、ヒストンメチル化がレベルが減弱していることを確認した。 これらの結果により、G9aはヒストンメチル化制御を介して肝発癌において促進的に機能していると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画に従って、予定通りマウスモデルおよびヒト臨床検体を用いて、肝癌の新規治療標的となりうるヒストンメチル化修飾因子につき検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
マウス肝組織検体を用いて、G9aが肝発癌を促進する分子メカニズムについて明らかにする。具体的には、網羅的遺伝子発現解析、およびクロマチン免疫沈降法などと用いて、肝発癌過程においてG9aがターゲットとしている腫瘍関連遺伝子の同定を試みる。 さらに、in vitro の系を用いて十分な検証を加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
生化学実験試薬、細胞培養試薬・器具、実験動物関連のほか、研究成果発表ならびに論文作成関連に使用予定。
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