研究課題/領域番号 |
18K15746
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岡藤 啓史 金沢大学, 附属病院, 特任助教 (20772958)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 潰瘍性大腸炎 |
研究実績の概要 |
本研究は、健常者からの便細菌叢移植で炎症性腸疾患患者の粘膜定着細菌叢がどのように経時的に変化するかを明らかにすることを目的としている。粘膜細菌叢 の変化が粘膜上皮の遺伝子発現、内視鏡炎症所見、臨床症状に与える影響を解析し、粘膜定着細菌の面から炎症性腸疾患患者の病態を明らかにする。炎症性腸疾 患患者に対して、糞便移植を10人に施行し、ドナー、レシピエントそれぞれの便かつ内視鏡下の生検で得られた直腸粘膜付着の細菌叢の解析する。便細菌叢移植 で寛解群と、非寛解群で比較し、寛解群に特異的に変化した粘膜定着細菌叢を同定する。 結果は、全例副作用なく安全に施行できた。クローン病3名は、2名で 臨床的改善を認めたが、内視鏡的改善は認め無かった。残りの1人は自己中断した。潰瘍性大腸炎患者がは3人寛解症例を認め、改善群ではEnterococcus属を含め た種々の細菌が増加し、多様性が上昇していた。しかし効果のなかった2患者がステロイド依存であったことから、ステロイドの長期投与が細菌定着に影響を与 えていると考えた。ステロイド投与マウスを作成したところ、Muc2発現が低下し、さらに便中のムチン量が低下していた。ムチン低下が細菌叢定着を低下させる 可能性を考えた。そこでステロイド内服マウスにムチンを補充して便細菌叢移植を行うと、細菌叢がドナー便に近似し、ムチンを補充しない例と異なる便細菌叢を呈した。これは、ムチンを補充すると便細菌叢移植の効果が改善する可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、便細菌叢移植の効果不十分例では、移植された便細菌(特に非病原菌)を、溶菌性バクテリオファージが減少させていると考えている。さらに便中溶菌性ファージの割合は、便中ムチンが減少するほどに、増えると考えている。そこでステロイドや、乳化剤であるP80を内服させムチンを減少させたマウスモデルを用いて、便中からVLP(virus-like-particle)を抽出し電子顕微鏡で粒子を確認し、DNA sequencingしバクテリオファージを同定する。さらに、便細菌にこのバクテリオファージを添加し培養することで、どのような細菌が溶菌するかを経時的に評価する。バクテリオファージの遺伝子の代謝経路確認するために、上記と同様に全ゲノムショットガンシーケンシングも行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症にて論文作成に支障がでたため。論文投稿料に使用予定。
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