研究実績の概要 |
本研究は、T細胞受容体α鎖欠失 (T cell receptor α knock out, TCRα KO)マウスに1週齢でマウスサイトメガロウイルス (murine cytomegalovirus, MCMV)を感染させた炎症性腸疾患CMV感染マウスモデルを用いて炎症性腸疾患におけるCMV感染による難治化のメカニズムの解明を目指している。 平成30年度の研究成果は以下の通りである。 1. TCRα KOマウスに16週齢から2週間デキサメタゾン(dexamethasone, Dex)を隔日投与し、大腸組織のサイトカインプロファイルを検討したところ、MCMV感染マウスではDex投与で腸炎の改善を認めず、MCMV非感染マウスと比べて有意に腸炎が悪化していた。さらに大腸組織の遺伝子発現がMCMV非感染マウスではTh2優位であったものが、MCMV感染マウスではTh1/17優位に変化していることを確認した。 2. TCRα KOマウスから作成した骨髄由来マクロファージ (bone marrow derived macrophage, BMDM) を用いて、ex vivoでLPS刺激実験を行った。BMDMのTNFα、IL-6、LI-1β、IL-12/23 p40などの炎症性サイトカイン産生をmRNAレベル、蛋白レベルで検討したが、MCMV感染の有無で明らかな差異は認められなかった。 3. TCRα KOマウスから単離した粘膜固有層単核球(lamina propria mononuclear cells, LPMC)を用いてex vivoでCD3/CD28刺激やPMA/ Ionomycin刺激を行った。いずれの刺激においてもMCMV感染マウスから単離したLPMCの方がMCMV非感染マウスから単離したLPMCと比較してIFNγやIL-17Aの産生がmRNAレベル、蛋白レベルのいずれでも増加している傾向にあった。IL-4の産生に関してはMCMV感染の有無で明らかな差異を認めなかった。
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