研究課題/領域番号 |
18K15748
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂根 貞嗣 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30817515)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルコール性肝障害 / オートファジー / 細胞死 / 脂肪蓄積 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
まず、ADH活性を有しエタノールを代謝可能と考えられているマウス肝細胞株AML12を使用したエタノール投与実験を行った。AML12にエタノール投与を行うと、投与濃度依存的、投与期間依存的にCaspase 3/7活性の上昇を伴う細胞数の低下を認め、アポトーシスの亢進が示唆された。また同時に、投与濃度依存的な脂質合成系遺伝子発現の増加、β酸化関連遺伝子発現の増加を認め、細胞内脂肪滴蓄積の増加が観察された。そこで、AML12に対するエタノール投与時のオートファジーの変化を検討するためにLC3 flux assayを行ったところ、Autophagy fluxの低下を認め、オートファジーの抑制が示唆された。 次に、AML12のオートファジーを変化させた際のアポトーシスと脂肪蓄積への影響を検討した。エタノール非投与下でsiRNAを用いてAtg7をノックダウンしてオートファジーを抑制させたところ、エタノール投与時と同程度のアポトーシスの亢進と脂肪滴蓄積増加が観察された。さらに、Atg7ノックダウン下でエタノール投与を行うと、コントロール群で見られるアポトーシスの亢進と脂肪滴蓄積増加は観察されなかった。 続いて、野生型マウスC57BL6/Jに、エタノール含有液体飼料を10日間摂取後、エタノール溶液を経口投与するモデル(NIAAAモデル)と、気化したアルコールを連日暴露するモデル(気化エタノール暴露モデル)の2種類のモデルを行い、それぞれにおける肝組織の表現型およびオートファジーの変化を検討した。両モデルにおいて肝脂肪蓄積の増加とアポトーシスの亢進を認めたのに加え、オートファジー関連蛋白LC3-Ⅱおよびp62の蓄積を認め、電子顕微鏡によりオートファゴソーム様構造物の蓄積を認め、オートファジーの抑制が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroの検討により、エタノール負荷が肝細胞オートファジーを抑制している可能性が示唆された。また、エタノール負荷により生じる肝細胞脂肪蓄積や肝細胞アポトーシスの亢進には、このオートファジー抑制が関与している可能性が示唆された。また、マウスを用いた実験により、生体においてもin vitroで見られたのと同様、エタノール負荷により肝細胞の脂肪蓄積増加およびアポトーシスの亢進が観察され、肝組織においてオートファジーの抑制が示唆された。以上の結果は、肝細胞でオートファジーの亢進させてエタノールによるオートファジー抑制を解除した場合に、アルコール性肝障害の肝病態である脂肪蓄積や肝細胞死が改善する可能性を示唆しており、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の結果をもとに以下の検討を行う。 ①エタノール投与モデルにおけるオートファジー亢進の意義の検討 AML12に対するエタノール投与モデルにおいて、肝細胞のオートファジーを亢進させた際の肝病態の変化を検討する。具体的には、オートファジー亢進薬として知られるラパマイシンの追加投与や、siRNAを用いてオートファジー抑制タンパクRubiconをノックダウンさせることによりオートファジーを亢進させ、脂肪蓄積や肝細胞死、エクソソーム分泌量に与える影響を検討する。 ②アルコール負荷マウスモデルにおけるオートファジー亢進の意義の検討 肝細胞のオートファジーを亢進させたマウスに対しアルコール負荷(NIAAAモデルまたは気化エタノール暴露モデル)を行い肝病態の変化を検討する。具体的には、肝細胞で恒常的にオートファジーが亢進しているAlbumin-Cre Rubicon flox/floxマウス(現在当科で飼育中)にアルコール負荷を行い、肝脂肪蓄積や肝細胞死の表現型やエクソソーム分泌量を検討する。また、野生型マウスにアルコール負荷を行うと同時にラパマイシンの経口投与を行い、肝病態への影響を検討する。
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