研究課題/領域番号 |
18K15751
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
玉川 祐司 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (20609341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ①バレット食道 / ②バレット食道腺癌 / ③Notchシグナル / microRNA |
研究実績の概要 |
バレット食道および腺癌発生におけるNotchシグナルとmicroRNAファミリーの1つであるmiR-200 familyの関連については明らかとなっていない。そこで、食道扁平上皮の恒常性維持におけるNotchシグナルとmiR-200 familyの機能解析を行うと共に、バレット食道およびバレット食道を発生母地とした腺癌の発症機構におけるNotchシグナルとmiR-200 familyの関与の詳細を解明することを目的とし、今年度は以下の研究実績を得た。
●組織学的にバレット食道・腺癌と診断されたヒト生検組織および手術標本を用いて、Notchシグナル関連因子(Notch1, Hes1, Atoh1)とmiR-200 family(miR-200a, miR-200b, miR-429)の蛋白発現を免疫組織染色法で、mRNA発現をReal-time PCR法にて検討を行なった。Notch1については、食道扁平上皮の細胞質に発現を認め、Hes1については、扁平上皮の核内において発現を認めたが、ATOH1については発現を認めなかった。また、miR-200 familyについては、発現亢進を認めた。バレット食道・腺癌におけるNotch1発現は食道扁平上皮と発現に差は認めず、腺癌組織において著明なHes1低下とAtoh1発現亢進を認めた。また、miR-200 familyについては、発現低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度までの研究実施計画にある“食道扁平上皮や病的状態(バレット食道および腺癌)”でNotchシグナルとmiR-200 familyの発現状況を解明する”はおおむね順調に進行しており、その解析結果によりNotchシグナルとmiR-200 familyの発現パターンの違いも把握できていることからも、その相互作用について更なる検討が必要な状況である。しかしながら、令和元年度(平成31年度)以降の研究十進計画にある“NotchシグナルとmiR-200 familyの関連についての検討”については進捗の遅れがややあり、速やかに取り組んでいかないいけないと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果を基にして、令和元年以降の研究実施計画である“NotchシグナルとmiR-200 familyの関連についての検討”の実施を予定している。 ①バレット食道および腺癌でのNotchシグナルの発現状況とmiR-200 familyとの関連 臨床検体を用いた検討で、上記に示したNotchシグナルの発現状況とmiR-200 familyの発現パターンから相互作用について検討する。 ②miR-200 familyを発現調節した培養細胞を用いたNotchシグナルの発現解析 予備的検討にて、Het-1AではmiR-200 familyの発現亢進を認め、バレット食道および腺癌の細胞株ではmiR-200 familyの発現抑制を認めている。Het-1AにmiR-200阻害剤を用いて、miR-200 family発現を抑制した際のNotchシグナル関連因子の発現変化について検討する。さらにこのシステムにおいて、胆汁酸刺激によるNotchシグナルの発現変化も確認する。バレット食道および腺癌の細胞株にprecursor miR-200発現ベクター(構築済み)を導入し、miR-200 familyの発現状況が異なる細胞を複数作成する。上記と同様にmiR-200 familyの発現レベルの変化によるNotchシグナル関連因子の発現を確認し、これらの細胞の増殖能をMTS assayやBrdU assayを用いて評価する。さらにmigration assayやinvasion assayも行う。また、セクレターゼ阻害薬やNotch1-siRNAによってNotchシグナルを直接抑制させた場合の状況とも比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
結果的に令和元年度から繰り返して使用する研究費として452,937円が生じた。その原因としては、新たに購入した各種抗体、分子生物学的試薬が当初の予定より安価で購入できたことが一因であると考えられる。 令和2年度の研究費使用計画としては、本研究に関する設備・備品は整っているため、実験動物や細胞株の購入費を中心として、各種抗体、分子生物学的試薬などの消耗品に関する費用が主な研究経費となる。
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