研究実績の概要 |
50~1000nmのエクソソーム内には、タンパク質、DNA, mRNA, microRNAなどが内包されている。こうした情報伝達物質は、細胞の起源によって異なるものの100~300種類の以上のタンパク質、100種類以上のmicroRNAが内包されている。故に、エクソソームは情報源を細胞から細胞へ伝搬するデリバリーカーゴとなりうる。 microRNAがエクソソーム中に存在し、それが細胞間で伝搬し、癌をはじめとする様々な病態を引き起こす可能性が示唆されたのは、最近であり、エクソソームをターゲットとした治療薬は存在しない。エクソソームをターゲットとした治療戦略は、①癌細胞内のエクソソーム内のmicroRNAの変化②癌細胞からのエクソソームの分泌を阻害③エクソソームの正常細胞・癌細胞への取組阻害である。我々が世界に先駆け見出した、生理活性物質でのGal-9が、癌治療において、エクソソームをターゲットとした①-③の検討した報告はない。様々な生理活性を持つGal-9が、①-③のいずれかの機能を有するならば、これまで我々が報告したGal-9の癌抑制機構の新たな機構を解明し、エキソソームを標的とした新薬剤となり得ると考える。 我々が、見出した新しい生理活性物質Gal-9が、膵臓癌に対して抗腫瘍効果があり、その機構としてGal-9が腫瘍細胞内・組織内のmicroRNAを変化させることにより、抗癌作用を有することを証明してきた。本研究は、Gal-9による膵臓癌の抗腫瘍効果が、腫瘍内のmicroRNAだけではなく、癌細胞からの放出されたエクソソーム(細胞外分泌小胞)内のmicroRNAにも変化を及ぼし、そのmicroRNA分子もまた、抗腫瘍活性を持つ可能性について検討をする。そしてGal-9が、新たな癌抑制機構のエクソソームを標的とした治療戦略に成り得る可能性についての基礎研究を行うことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌細胞株、肝細胞癌株におけるGal-9の非添加、添加の培養溶液中のエクソソームの単離およびエクソソーム内のmicroRNA抽出 膵癌細胞株、肝細胞癌株におけるGal-9の腫瘍増殖抑制効果は、我々が報告しており、PK-1, PK-9を用いる。それぞれの培養細胞を150mmのディッシュで細胞培養を行い、50%になるまで培養を行う。培養上清を除き、PBSで洗浄する。無血清培地を加え、0.3μM のGal-9の添加、非添加群において、24時間,48時間後の培養液からエクソソームを単離する。同様な実験を肝癌細胞株Hep3B, Huh-7を用いて同様な実験をした。 エクソソーム溶液をmiRNeasy Mini Kit(キアゲン社, 本課題研究で申請)でsmall RNAを含むtotal RNAとして抽出する。これらのRNAの品質は、Agilent 2100バイオアナライザー(当教室に保有)により検討した。 膵癌細胞株の培養液からエクソソーム由来のマイクロRNAを回収しmiRNeasy Mini Ki、これをアレイ用のサンプルとする。アレイに、標識(Ambion社、mirVanaTM miRNA labeling kit)したサンプルをオリゴチップ(東レ,Human miRNA Oligo 4 arrays ver.21、本課題で申請図4-②)にハイブリダイゼーション後、アレイ用スキャナーでスキャニングを行った. Gal-9のがん細胞に発現亢進、減弱するエクソソームmicroRNAを同定した。肝癌細胞株においても同様な実験を行い、Gal-9投与における発現亢進、減弱するエクソソームmicroRNAを同定した。
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