研究課題/領域番号 |
18K15757
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
北川 美香 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80588632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 尿 / バイオマーカー / miRNA / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、全コホート522例から、年齢・性別をランダムにマッチさせた415例を抽出、それらをランダムに①網羅的解析コホート9例(健常者: 6例、大腸癌患者:3例)、②トレーニングセット280例(健常者・大腸癌患者:各140例)、③バリデーションセット126例(健常者・大腸癌患者:各63例)の3群に分類した。 最初に、①網羅的解析コホート9例を用いてmiRNAアレイ解析を行い、大腸癌症例の尿中で異常発現しているmiRNAを複数同定した。次に、②トレーニングセット280例において、①で抽出した各miRNAをqPCR法で測定し、多変量解析により2種類のmiRNAを用い、有意な大腸癌診断マーカーと抽出・診断パネルを構築した。2種類の尿中miRNAを用いて作成した大腸癌診断パネルはROC曲線におけるAUC = 0.811と良好な結果であった。最後に、独立した③バリデーションセット126例を用い、②で樹立した診断バイオマーカーパネルの精度を検証したところ、2種類の尿中miRNAともに健常者と比較し大腸癌症例で有意な高発現を示し、これら単独および2つのmiRNAの組み合わせを用いた診断パネルによる大腸癌診断能は良好であった(AUC = 0.868)。 また全コホートにおける、健常者とStage 0/I大腸癌症例の早期診断能の解析においては、2種類のmiRNAともに健常者と比較しStage 0/I大腸癌患者の尿中で有意に高発現を示し、その組みあわせにより健常者とStage 0/I大腸癌症例の識別もAUC = 0.845と良好に可能であり、Stage0/I大腸癌を感度:90.6%、特異度:65.5%で診断可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の発明において、昨年、国内特許出願を行った。特許出願に伴う準備等により、基礎的検討の部分の開始が若干の遅れをきたした。PCT出願までに、基礎的なメカニズムを含めた検討を加え、本バイオマーカーの理論的根拠をさらにかためる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果により、早期の大腸癌患者の尿中において2種類のmiRNAが高発現することを見出し、特許出願を行った。大腸癌におけるこれらのmiRNAの意義は不明であるため、本バイオマーカーの理論的根拠のため、今後は下記の検討を行う。 1. 大腸癌組織中のmiRNA発現:大腸癌組織および周囲の正常組織からmiRNAを抽出し、こららのmiRNAの組織中での発現を検討する。 2.大腸癌細胞中のこれらのmiRNAをノックダウンすることにより、細胞増殖や浸潤能への影響を検証するとともに、データベースからえられたmiRNAのターゲット遺伝子の発現調節も検証し、大腸癌におけるこれらのmiRNAの機能的意義を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究結果は順調であるものの、また特許出願のための申請書類の作成や再現性をとるための反復実験を複数回行っため時間を要し研究に若干の遅れがでた。今年度中に、現在途中である大腸癌組織中のmiRNA発現解析と、miRNAの機能解析のための大腸癌細胞を使用した基礎実験を完遂する。
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