これまでの研究で、肝臓特異的Bcl6欠損マウスにおいて実験的に誘導した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態が改善されることを見出しており、Bcl6のNASH発症への関与を明らかにしている(特別研究員奨励費)。本研究ではその分子メカニズムを解明するために、エピジェネティックな遺伝子発現制御の観点からBcl6の分子機能を解析する。 まず、Bcl6に直接結合する相互作用因子を同定する目的で、293T細胞を用いて一過的にFLAG-Bcl6を過剰発現させ、FLAG抗体を用いた免疫沈降とFLAGペプチドによる溶出を行い、Bcl6相互作用因子群を精製した。質量分析測定とデータベース検索により、既にBcl6と相互作用することが知られるB-CoRやp53などが同定され、この検出系の有用性が確認された。さらに、Bcl6相互作用因子群としてZing fingerを有する転写因子が多数同定され、また新規のBcl6相互作用因子も複数見出した。これらの因子の一部について、293T細胞にFLAG-Bcl6を過剰発現させ、免疫沈降とウェスタンブロッティング法にて相互作用を確認した。 次に、肝臓におけるBcl6相互作用因子群を精製するために、HepG2においてFLAG-Bcl6を一過的に過剰発現させ、Bcl6相互作用因子群を精製したが、B-CoR等の既知相互作用因子群の同定には至らなかった。また、HepG2のFLAG-Bcl6の安定発現株の樹立を試みたが、樹立には至らなかった。そこで今後は、肝臓でのBcl6相互作用因子群を精製するために新たな精製系を構築する。現在、アデノ随伴ウィルスにより、マウス個体肝臓においてFLAG-Bcl6を過剰発現させ、この肝臓からのタンパク質抽出液を用いてBcl6相互作用因子群の精製を試みている。 今後これらの方法で同定したBcl6相互作用因子と、エピジェネティックな発現制御機構について解析する予定である。
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