研究課題/領域番号 |
18K15765
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
小嶋 融一 大阪医科大学, 医学部, 講師 (10747744)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ERストレス |
研究実績の概要 |
非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)が上部消化管のみならず小腸でも頻繁に粘膜傷害を引き起こしている事が明らかとなってきた。汎用薬であるため胃粘膜障害と共に臨床的に大きな問題となっている。小腸障害の機序については、酸化ストレスによる粘膜透過性の亢進が腸内細菌あるいは刺激物質の侵入等を伴い、炎症を引き起こす事等が考えられているが、その詳細な分子機序については不明な点が多い。ERストレス応答は、異常タンパク質の蓄積等に対する生体の応答反応であり、その破綻は癌、神経変性疾患のみならず、クローン病等消化管粘膜傷害の原因となることが報告されている。本研究は、NSAIDs起因性小腸障害におけるERストレスがオートファジーおよびアポトーシスを引き起こす機序を詳細に検討し、ERストレスを人為的に制御する(ERストレスのプレコンディショニング)ことにより小腸潰瘍を治療するための分子的基盤を明らかにすることを目的としている。 平成30年度はラット小腸上皮細胞IEC6細胞を用いて、人為的に適度なERストレスを引き起こし、NSAIDs(ここではインドメタシン、IM、を用いる。)起因性小腸障害に与えるこのと実現可能性を探索することを計画していた。予定通り、IEC6細胞を用いて、細胞数及び、ストレス源濃度の最適化、そして、処理時間の最適化等を行った。結果、適度なERストレスが、IM起因性の細胞障害を再現性良く抑制することも十分に確認することが出来た。 次年度は、動物実験、及びより詳細な分子機序を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書では、平成30年度の予定として、ERストレスの人為的制御の可能性、及び、その人為的ERストレスによって、実際にNSAIDs起因性の小腸障害が軽減できるかどうかの基礎的研究を行うことを予定していた。ラット小腸細胞株IEC6細胞はNSAIDs(IM)起因性小腸障害を再現できる細胞株であることが、多くの論文によって明らかにされている細胞であり、この細胞を用いて上記の検討を行う計画であった。IEC6細胞の細胞数、ERストレス源(Thapsigarsin及びTunicamycin)の濃度及び処理時間を変え、IEC6細胞のIM感受性を調べた結果、IEC6細胞濃度の最適化および、ERストレス源の濃度及び処理時間をほぼ最適化することが出来た。我々の提案通り、適度なERストレスでの前処理はIMによるIEC6細胞の細胞障害を軽減できることが分かってきた。現在、使用している人為的ストレス源以外のより毒性が低く、臨床応用可能なストレスでも障害の軽減が図れることも分かってきた。これらのことより、概ね、予定通り進行していると考えている。残念ながら、ERストレス軽減因子、ケミカルシャペロンについては試薬自体の細胞への影響の大きさから、思い通りの結果を得ることは出来なかったが、今後さらなる検討を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度以降は、平成30年に得られた結果を基に、マウスを用いて動物実験に応用していくことが当初の計画である。この計画に従い、平成31年度(令和元年)後期には動物実験を行う予定である。また、平成30年にIEC6細胞で得られた、ERストレスプレコンディショニングによるIM起因性細胞障害のより詳細な分子機序も明らかにしていきたいと考えている。加えて、平成30年度にはERストレス源として、人為的なTG、及びTuniを用いたが、より応用範囲の高いERストレス源並びにその他のストレス(間接的ERストレス、酸化ストレス、ミトコンドリアストレス等)についても検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の未使用額が318,677円あり、次年度に繰り越しとなった。次年度は細胞を使用した実験に加え、動物実験を行っていく予定である。本年度に得られた結果より、より実用性の高い新たなERストレス源を見出し、動物実験の規模が多少大きくなる可能性を鑑み、次年度繰り越しが発生した。本申請課題の遂行には、必要な措置と考えている。
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