研究課題/領域番号 |
18K15768
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研究機関 | 東京都立駒込病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
木村 昌倫 東京都立駒込病院(臨床研究室), 肝臓内科, 非常勤医師 (20805262)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NASH / 肝硬変 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / Wntシグナル / 肝線維化 |
研究実績の概要 |
肝硬変に対して実用化されている抗線維化治療薬は現時点では存在していない。 近年、肝臓を含めた臓器の線維化には、Wnt/β-cateninシグナルが重要であることが明らかになってきた。申請者らは、Wnt/β-catenin阻害薬であるPRI-724をHCV Tg マウス及びC型肝硬変患者に投与して良好な抗線維化作用を確認した。本研究は、HCVとは病態の異なるNASH肝線維化モデルでの抗線維化作用の検討、及びそのメカニズムを解明することが目的である。 計画している具体的な研究項目は、①肝臓内のWnt/β-cateninのシグナル発現解析、②PRI-724の抗線維化作用の解析、③肝臓内炎症細胞の脱線維化メカニズムの解明、の3つである。
今年度は、Wntシグナル関連の遺伝子をノックアウトしたマウスを複数種類用いて、高脂肪食を4か月間及び8か月間与えるグループを設定し、PRI-724を投与し、肝臓を採取して以下の項目を検討した。(A)病理学的には、肝線維化をSirius Red染色と鍍銀染色で評価し、3DHISTECH社のPatternQunat解析ソフトを用いて肝線維化面積を定量化した。(B)Bio-Plex MAGPIXを用いて血清中のCytokines、Chemokines、Tissue Inhibitor of Metalloproteinase(TIMPs)、Matrix metalloproteinase(MMPs)、S100A4、S100Pの測定を行った。(C)肝臓組織よりRNAを抽出し、脱線維化作用を有するMMPs,TIMPs等のプロテアーゼの発現をRT-qPCRにて解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Wntシグナルに関連した遺伝子をノックアウトしたノックアウトマウスを用いることで、NASH由来の肝線維化においてもWnt/β-catenin シグナルが重要な役割を担っていることをを確認した。また、Wnt/β-catenin 阻害剤であるPRI-724を投与することで肝線維化の改善を認めた。またそのメカニズムとしてMMPsやいくつかのサイトカインが関わっている可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、NASH肝線維化モデルマウスにおけるWnt/β-cateninシグナルを介した肝線維化の病態解明を目的としており、肝臓内のWnt/β-cateninのシグナル発現解析、PRI-724 の抗線維化作用の解析、肝臓内炎症細胞の脱線維化メカニズムの解明を引き続き行う。 また、肝がん組織ではβ-catenin変異が高率に認められる。そのため、肝がん発症におけるWnt/β-cateninシグナルの重要性が指摘されている。そのため、現在飼育しているWnt/ β-cateninシグナルに関連する遺伝子をノックアウトした複数種のNASH肝線維化モデルマウスを用いて、Wnt/β-cateninシグナルと肝がん発癌との関係を解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)NASH肝線維化モデルマウスの一部のノックアウトマウスの繁殖状況が不良であったため、マウス実験のための試薬代の経費が予定よりも少額で済んだため。また、PCRやELISA に関連した試薬の一部は既存の試薬を使用することが可能であったため。 (使用計画)当初予定の実験計画に加え、NASHからの肝がんの発癌におけるWnt/β-cateninシグナルの役割についてもノックアウトマウスを用いて検討を行う。
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