研究課題/領域番号 |
18K15771
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
星川 恭子 山形大学, 医学部, 助教 (20613053)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 |
研究実績の概要 |
申請者らの最終目的は脂肪性肝疾患における肝再生の分子生物学的機構を明らかにすることであるが、本研究では基礎的検討として脂肪性肝疾患マウスモデル動物を用いて NAFLD における肝切除後の肝再生のメカニズムを解明することを目的としている。 今年度はまず、食餌負荷による正常、単純性脂肪肝および NASH マウスモデルを確立することを目的とし実験を行った。 具体的な方法であるが、8週齢のマウスに高脂肪、高フルクトース、高コレステロール (High fat, fructose and cholesterol: FFC ) 食あるいは普通食を20週間投与し NASH マウスおよび対照群マウスを作成した。単純性脂肪肝マウスは普通食10週に FFC 食10週投与し作成した。各々の食餌負荷後、肝臓を摘出し肝内の炎症、線維化について組織学的に評価するとともに、血液生化学検査にて肝障害についても確認した。 結果であるが、FFC 食餌負荷20週のマウスは、普通食群と比較し有意に体重が重く、肝/体重比が高かった。肝内の炎症について、マクロファージマーカーのF4/80免疫染色を用い解析すると、FFC食時負荷20週のマウスでは染色領域が有意に増加していた。同様に肝の線維化についてSirius-red染色にて確認すると、FFC食餌負荷20週のマウスでは、普通食およびFFC食餌10週負荷のマウスと比較し肝細胞周囲の線維化を認めた。また、血液生化学検査では、FFC食餌負荷20週のマウスでは普通食およびFFC食餌10週マウスと比較し有意なALT上昇を認めた。 FFC食餌負荷20週のマウスでは肝内の炎症と線維化を伴うNASHが誘導されており、今年度の研究では、今後の研究の土台となるNASHマウスモデルを確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪性肝疾患における肝再生の分子生物学的機構を明らかにすることを目的とした本研究においては、脂肪性肝疾患マウスモデル動物の確立が必須であるが、今年度は食餌負荷による正常、単純性脂肪肝および NASH マウスモデルを確立することができた。 具体的には、高脂肪、高フルクトース、高コレステロール (High fat, fructose and cholesterol: FFC ) 食を20週間負荷したマウスでは、組織学的に肝内の炎症と線維化を伴うNASHが誘導されており、今後の研究の土台となるNASHマウスモデルを確立することができた。これにより次年度以降の、具体的な肝再生の分子生物学的機構の解析が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では、FFC食餌負荷によるNASHマウスモデルを確立することができた。このため次年度以降の研究では、このマウスモデルを用いて脂肪性肝疾患における肝再生の分子学的機構を明らかにすることを目的としている。 具体的には、NASHモデルマウスに肝障害を起こし、その再生過程について、コントロールマウスあるいは単純性脂肪肝マウスと比較する。 また、NASHマウス肝の肝再生にかかわる遺伝子発現について、次世代シーケンサーを利用した網羅的な解析も予定している。 さらに、最終的には肝再生に強く関与する分子の特定に至れば、阻害薬投与あるいは当該遺伝子欠損マウスを用い、NASHマウスモデルにおける肝再生の促進効果などについて検討することができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として、16,784円が生じたが、これは今年度の研究では当初の予算内でNASHマウスモデルの確立を確認することができたためである。翌年度も引き続き、確立したNASHマウスを用いた、肝再生機構の研究を行っていく予定であり、次年度使用額分の助成金については、今後の研究に必要な試薬等物品の購入での使用を予定している。
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