申請者らの最終目的は、脂肪性肝疾患における肝再生の分子生物学的機構を明らかにすることであるが、本研究では基礎的検討として脂肪性肝疾患マウスモデル動物を用いてNAFLDにおける肝障害後の肝再生のメカニズムを解明することを目的としている。 まずは、食餌負荷による正常、単純性脂肪肝およびNASHマウスモデルを確立することを目的とし実験を行った。結果、FFC食餌負荷20週のマウスでは組織学的に肝内の炎症細胞浸潤と線維化を伴うNASHが誘導されていたことを確認しNASHマウスモデルを確立できた。次に、増殖因子であるEGFファミリーに属するEpiregulin遺伝子を欠損させたマウスに脂肪食負荷を行い、肝障害下の肝再生のメカニズムを解明することを目的とした実験を行ったEpiregulin遺伝子欠損マウスでは、対照群である普通食を投与されたマウスと比較し、体重が重く、肝の脂肪化の程度が高く、組織学的にNASHが増悪していた。さらに、得られたマウス肝組織の解析を行った。Epiregulin遺伝子欠損マウスでは、対照群と比較し組織学的に肝の炎症細胞浸潤が軽減していた。さらに、遺伝子発現解析においてもTNF-αの肝内mRNA発現Epiregulin遺伝子欠損マウスで有意に低下していた。また、組織学的に肝線維化を評価すると、Epiregulin遺伝子欠損マウスで線維化が有意に軽減している所見が確認でき、同様に線維化マーカーであるα-SMAの肝内mRNA発現もEpiregulin遺伝子欠損マウスで有意に低下していた。 今回の結果からは、肝障害時の肝再生に寄与する増殖因子であるEpiregulinがNASH病態の進展の過程で肝線維化進展に寄与している可能性が示唆された。詳細な機構についてさらに検討をすすめたいと考えている。
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