本年度は当初研究計画に従い「クローン病の小腸病変部に内在する特殊な幹細胞機能を有する細胞の新規分子マーカー及び生体内局在の同定」、及び「同細胞分画の単離と幹細胞特異的機能を支える細胞内分子機構の解明」について研究を実施した。その結果、以下の様な成果を得ている。 1.培養したヒト腸上皮オルガノイドについて、関連する96遺伝子について解析可能なTaq-man PCR (定量PCR)の測定系を確立し、最適化を行った。2.ヒト腸上皮オルガノイドについて、通常用いている培養条件においては上記測定系を用いることにより、74遺伝子について発現が安定して検出可能であることが明らかとなった。一方、9遺伝子については検討した条件の中ではヒト腸上皮オルガノイドにおける発現が確認されないことも明らかとなった。3. 健常粘膜由来・クローン病寛解粘膜由来・クローン病病変部由来の各オルガノイドを対象とし、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析(RNA-Seq)の実施に必要な条件を確認した。同条件に基づいたデータ取得を行った。4. マイクロ流路を用いたシングルセル解析に加え、マイクロビーズを用いた新規シングルセル解析法の有用性について検討し、マイクロビーズ法により解析規模を拡大したシングルセル解析が可能であることを確認した。 従って本年度の研究により、特徴ある未知の幹細胞集団を同定するための系の確立や網羅的遺伝子発現データの一部取得が完了した。
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