慢性膵炎は非可逆性進行性の慢性炎症性線維化疾患で、膵癌のリスク因子であることが明らかになっている。慢性膵炎臨床診断基準2009において早期慢性膵炎が提唱され、非可逆性の慢性膵炎しか診断できないという問題点を克服し、早期発見・早期治療介入による膵癌発症の抑制が期待される。近年、腸内細菌叢バランスの破綻が炎症性腸疾患のみならず肥満や肝疾患など様々な病態に深く関与していることが明らかになり、慢性膵炎においても口腔内細菌、小腸内細菌異常増殖と関連することが報告されている。本研究では健常者、早期慢性膵炎患者、慢性膵炎患者、膵癌患者の便中DNAを用いて腸内細菌叢の変化を明らかにすることである。 本研究は当院の倫理委員会に申請し、健常者、慢性膵炎、早期慢性膵炎、膵癌患者の便を採取し、DNAを抽出した後、腸内細菌叢を解析する研究について了解をえた。本症例に先立って重要となるのは検体収集となる。当院に通院中の患者をピックアップし、随時同意を得られた患者の便を採取している。さらに、これまで我々は腸内細菌叢の解析を経験してきており、同手技により、便中DNAを採取している。現在それぞれの疾患の患者数例ずつに同意を得てDNA抽出済みである。今後はさらに症例を集積していく予定としている。 腸内細菌叢の変化についての解析ではそれぞれの疾患で腸内細菌叢が異なることが予測される。この腸内細菌の中で、疾患と関連していると予測される腸内細菌を抽出することを今後の目的としており、さらにこの腸内細菌が、膵線維芽細胞やマウスにおよぼす影響を検討していく予定である。
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